imasia_15007252_S (写真=PIXTA)

ディープラーニング(深層学習)が、人工知能に革命をもたらす技術として注目を集めている。この技術の活用に積極的なのは、GoogleやMicrosoftなどの米国企業ばかりではない。日本企業の中にも、いち早く商用化しようとする動きがある。


画像認識を商用サービスに活かすABEJA

2012年に設立されたベンチャー企業ABEJA(アベジャ)は、小売業や外食などの店舗内で来店客の動きやその属性を計測する「人流計測」と呼ばれるシステムで、広くその名を知られるようになった。店舗内にカメラを設け、CNNと呼ばれる画像認識向きのディープラーニング技術によって、リアルタイムに人の流れを認識する。

あらかじめ特定の陳列棚を指定しておけば、来店客の何人がその棚を触ったかを把握できるといった具合に、店舗内の売り場ごとの通過人数や個々の来店客の推定年齢・性別などを把握できるのだ。さらに、2次元的な「ヒートマップ」によって分布を可視化し、店内のカメラ映像に重ねて人の流れを表示することもできる。通過人数が多いほど"温度"が高くなる仕組みとなっている。

認識や分析の結果はクラウドサービスを通じて小売店の担当者などに提供される。数時間~1日おきに自店舗の人流分析結果をチェックした担当者が、商品の陳列や接客の改善などに生かすことができるのだ。こうした同社の人流計測システムは、既に高い評価を得ているのだが、その実例のひとつを三越伊勢丹に見ることが出来る。

三越独自の全国お菓子セレクトショップ「菓遊庵」を訪れる顧客の店舗内体験を最大化することを目的に、三越伊勢丹とABEJAによる共同プロジェクトが仮説検証実験を行った。先進的テクノロジーを店舗レイアウトに活かすという日本で初めての試みであり、売上向上に繋がる施策に繋がったという。


ディープラーニングを用い製造現場を改革するPFN

今年6月には、ディープラーニング技術・機械学習技術を開発するベンチャー企業Preferred Networks(PFN)が、産業用ロボット開発で知られるファナック <6954> との提携を発表した。

PFNは人工知能の分野で世界トップレベルの技術力を持つ企業であり、産業用ロボットの大手企業との協業によって、産業用ロボットや工作機械の最適化を目指すことになる。これは、ディープラーニングを用いた製造現場の改革を意味する。

PFNはまた、パナソニック <6752> との提携も発表している。ADAS(アドバンスド・ドライバー・アシスタンス・システム)などの自動運転技術の開発を行うとのことで、パナソニックは、テレビ事業で開発した技術を自動車向けセンサー技術に応用すると見られている。また、PFNはすでにトヨタ自動車 <7203> と提携しており、自動車分野でのさらなる飛躍が期待される。