PFNの提携に共通する点は、複数のセンサー・ロボットの協調した行動をリアルタイムに最適化するところにある。パナソニックの例であれば、複数の車載センサー・信号機や道路などに設置されたカメラなどの情報を統合し、自動車の衝突などを回避する。

また、ファナックの例であれば、1台の溶接ロボットが故障などで停止した場合に、残りの9台が動作を変え、ラインを止めずに溶接を続ける方法を自動的に発見する。ファナックの稲葉清典専務取締役は「複数のロボットが互いに協調して学習でき、制御に必要なリアルタイム性を備えた機械学習技術を持つのはPFNだけだった」と語っている。

従来の機械学習技術は、データを一か所に集約して分析する方法を採ってきた。この場合、センサーの数や分析するデータの量が増加した場合、分析の負荷が高くなり過ぎるため、リアルタイムに分析結果を得ることは難しい。それに対して、PFNの手法を用いると、データを一か所に集めることなく、効率的な分析が可能になるのである。


人工知能技術は国家レベルの競争に

モノづくりの現場における人工知能技術の活用は、国家レベルでの競争になっている。

日本では2015年1月に「ロボット新戦略」を発表し、人工知能などの最先端技術によって生産性向上を目指す成長戦略を示した。「世界のロボットイノベーション拠点」、「世界一のロボット利活用社会」、「IoT(Internet of Things)時代のロボットで世界をリード」の3つの戦略を掲げている。

一方で、アメリカではGEやIBMが中心となり、政府、産業、大学を結びつけるインダストリアル・インターネット・コンソーシアムという団体が2014年に設立された。製造・医療・輸送の現場で、データを活用した新技術の開発を支援している。またドイツでも、「第4の産業革命」と呼ばれる、産官学が一体となったプロジェクトが進んでいる。工場の「スマート化」を進めることで、新製品の開発や生産効率の大幅な向上を図ると共に、エネルギー消費量の減少や従業員の安全確保などへの寄与が期待されている。

人工知能は、徐々に産業のありかたを変えつつある。しかも、そのスピードは日に日に増している。日本企業が、こうした技術を武器に世界と戦うニュースが増えていくことを今後も期待したい。

【関連記事】
「アマゾンを超えるのは楽天ではなくヨドバシ」急成長の原動力は?
日本人大富豪ランキング トップ20の顔ぶれはこれだ!
日経新聞・四季報などがネット上で全て閲覧可!?その意外な方法とは
年金情報流出!あなたの情報を守る「予防医療」とは?
NTTを超える数兆円超の上場?元国営3社のIPOに迫る