③値動きが激しい銘柄は判断力を奪う
最後は値動きが激しい銘柄についてです。
上場から数日しか経っていないようなIPO銘柄や新興市場における材料銘柄は値動きが激しい銘柄の代表格です。これらは値動きが早いというだけでなくボラティリティー(値幅)も大きく、1日の高値と安値の値幅が20%を超える銘柄も珍しくありません。見方を変えると、短時間で大きく値上がりする可能性を持っているとも言えます。たとえば2000円の銘柄を2000株、総額400万円分で買い付けたとします。場合によってはそこからわずか20秒後には株価が買値よりも3%上昇しているケースもあり得るということです。400万円の3%ですので、たったの20秒ほどで12万円の含み益が発生している事になります。ちなみにウォーレンバフェット氏の時給を計算したところ約660万円ほどでしたので、12万円を稼ぐ為にはあのバフェット氏でも1分はかかる計算になります。
このように値動きの激しい銘柄は、一般人をわずか数秒で世界の富豪と時給を張り合えるレベルにまで引き上げてくれる力を持っているのです。しかし上がる場合があれば下がる場合もあるのが投資というものです。仮に先ほどのように一時的に3%の含み益を出してからその後40秒で今度は買値よりも3%下がったとします。つまり1分の間に3%上昇してそこから6%急落したことになります。損益は12万円の含み損を抱えてしまっている状態です。『え?うそでしょ!?でもすぐに戻るはず、、、』大抵の人の心の中はこうでしょう。さっきまで12万円の利益が出ているのを眺めていただけに、ここで瞬間的にロスカットに踏み切れる投資家はそう多くはないのです。ほとんどの人は十分に考える時間を与えられないうちに決断を迫られても、結局はなにもできずにただ頭を抱えている事ぐらいしかできないものなのです。
投資経験が多少ある方ならお分かりだと思いますが、株価が時間を掛けてじりじりと下がってくる時というのは『ここまで下がったらロスカットしよう』と予め決めていたロスカットラインを守れるものです。しかしほんの数十秒で一気に急落した場合というのは、本来なら下せた正常な判断が『すぐに戻るはず』という感情に邪魔をされてできなくなるのです。ましてや直前に出ていた含み益が多ければ多い程、ロスカットのワンクリックを躊躇ってしまうのです。
プロと言われる機関投資家たちもこれらの銘柄をトレードしますが、プロは躊躇しません。思惑とは逆に動いた時はそれがどんなケースであれ感情を挟まず問答無用で即ロスカットを執行します。 IPO銘柄や材料銘柄はボラティリティが大きいという特性上、多くの投資家を引きつけますが、目紛しい株価の変動に対応するには瞬間的な判断力が要求されます。 NISA投資と資産を守るという両方の観点からも、かなりリスクのある株と言えるでしょう。
・結局買っていい銘柄ってなに?
業績の悪い株はだめ。業績の良い株も注意が必要。大きく儲けようとするのは危険だしハードルも高い、、、ではなにを買えばいいのでしょうか?
それは リスクが許容できる株 です。これは目標リターンや元手の資金によってそれぞれ異なると思います。ただひとつ言える事は1回の取引で自己資金の1割も2割も失ってしまう可能性のある銘柄やトレードを続けて、順調に資産を増やしていった人は非常に少ないという事です。もちろん大きく儲けたいのは誰しも一緒ですし、リスクを取っているからには利益を最大化したいと考えます。マーケットでは業績も振るわず株価が低迷している銘柄に限って上昇に転じた時には反発が大きかったりします。値動きの激しい新興市場では、昨年1年足らずで株価が100倍になった銘柄も生まれました。
NISA制度の導入によって投資を始めた、または始めようと考えている方の中には、こんなふうに一気に人生を変えてしまうほどの利益を狙いたいと思う方も多いでしょう。ですが虎穴に入らずんば虎児を得ずという言葉もあるように大きな利益を得るにはそれなりのリスクが伴います。 私は資産運用を成功させる人とそうでない人の違いは、『大きく勝つ事よりも資産を守る事』を第一に考えているかどうかであると思います。
いくら儲かるかではなく、勝算はどのくらいか。 私自身、証券ディーラーとして常にその事を考えながらトレードしています。
BY D.T