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(写真=Thinkstock/Getty Images)

小売企業にとって万引きは、利益を圧迫する大きな問題だ。日本の小売業のロス金額は約1兆円で、そのおよそ半分が万引きによるものと推定されるほど(小売業におけるロス対策および商品管理に関する世界調査報告書「GRTB2013-2014」日本語版による)。

そこで最近では、万引き防止用に「顔認証システム」が注目されている。導入企業はまだ多くなく、2013年度の調査によれば、万引き対策として顔認証システム・不審動作検出機器導入している企業は全体の2.5%、防犯カメラ導入企業が70.7%にすぎないが、今後の普及が予測される。


自分が万引き犯として登録されているかも……

こうした中、ネットでは「顔認証による万引き防止システムに登録されて困っている」という相談が見られるようになった。ショッピングモールやコンビニに行くと、決まって特有の店内アナウンスが流れたり、店員がわざとらしく寄ってきて棚の整理を始めたり、警備員に追尾されたりするというのだ。

その店が実際に「顔認証システム」を導入しているかは不明だが、「自分も誤登録されているかもしれない」という声も聞かれる。中には「気のせいでは」という否定的な意見もあるが、「顔認証システム」への関心の高さがうかがえる。


防犯目的で全員を撮影した画像保存するのは合法か?

万引き防止用の顔認証システムは、来店客の顔を日付・時間・写真別に一覧し、そこから要注意人物を判別してデータベースに登録できる機能がある。この点について、ネットワークロボットや防犯カメラ・監視カメラといったプライバシー権の問題に詳しい花水木法律事務所の小林正啓弁護士に法律的な見解をうかがった。

小林弁護士は「まず小売店が防犯上の目的で、入店した顧客全員を撮影したこの画像を1~2週間くらいの期間保存することは合法です」と指摘する。その上で、「万引き現行犯の画像であれば、警察に証拠として提出することも合法ですし、不審な動作から万引きが合理的に疑われる客の画像を長期間保存したり、その画像を他店舗と共有したりすることも、法人格をまたがない限りは合法と考えます」という。

小売店がこうしたシステムの運用を業者に依頼している場合もあるだろうが、「小売企業ではなく防犯会社が画像を保有している場合は、警備を委託する他法人の店舗でその画像を利用しても合法です」(小林弁護士)とのことだ。しかし、「万引き現行犯の画像であっても、法人格の異なる第三者に提供すれば違法になりますし、犯人の同意を得ても、法人格をまたぐ共有は許されないと解されます」という。

だが実際には、システムにかかる費用は多額のため、導入は進んでいない。小林弁護士は「現在(2015年7月)改正中の個人情報保護法では、顔認証情報も個人情報に含まれると明記される見通しです。ただ、現在の技術水準による顔認証の精度はそれほど高くない上に費用も高額です。一般の小売店で万引き防止のために導入するコストメリットはなく、当事務所への相談も誤解に基づくケースが多いのが現状です」と話している。

今後、万引き防止システムでも安価な商品が登場して普及が進むと思われる。当然、誤解で登録されてしまうリスクは依然残ったままだし、逆に店舗側の接客態度によっては、顧客が「万引き犯として画像登録されているのでは」と誤解するケースも増えるだろう。いずれの場合も店舗のイメージダウンにつながる恐れがある。防犯対策は必要だが、慎重な運用を心がけたほうがいいかもしれない。(ZUU online 編集部)

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