今年上半期の訪日外国人客数は、前年度比46%増の914万人となった。「爆買い」はそうした外国人観光客の日本での消費=インバウンド消費の一形態であるが、その名の通り、それはかなり特殊な購買行動でもある。箱単位で商品を買う、場合によっては店舗の在庫すべてを買い占める――。その特徴的な買い方と経済効果で話題をさらってきた。


こんなものが「爆買い」されている

「爆買い」といえば以前は、電気炊飯ジャー、温水洗浄便座、そして空気洗浄機の家電が定番であったが、最近はそのジャンルが広がっている。

目立つのが医薬品、化粧品、健康食品だ。医薬品については日本の商品が「神薬」として紹介され、飛ぶように売れている(参天製薬の「サンテボーティエ」や小林製薬の「アンメツルヨコヨコ」「サカムケア」「熱さまシート」、エスエス製薬の「イブクイック」「ハイチオールC」など)。

また日本の高性能な紙おむつや粉ミルクも人気が高い。それ以外にも「白い恋人」などのお菓子や、あるいは包丁など、日本の高品質な商品が、広くネットで口コミされ、幅広く購入されてきた。


なぜ「爆買い」は起きるのか

この「爆買い」は外国人全体における特徴ではなく、中国人観光客による特有の現象である。その理由のひとつに免税の仕組みが挙げられるだろう。免税となるためには1店舗にて5,000円以上の購入が必要で、そのためにどうしても、商品を単品ではなく、複数個を買うという行動になりがちだ。

また、そもそも個人の消費のために購入しているのではなく、「代理購入」を行っている人もが多い。つまり、消費者としてではなく、代理人として商品を買い(仕入れ)、(中国で)売るのだ。中国の消費者にとっても、そうした代理人から買ったほうが、地元で買うより安く手に入る。観光客でありながら、仕入業者のような購買行動をとる理由はそのあたりにもある。

さらには、そもそも「官製爆買い」だという意見もある。「官製デモ」という言葉がかつて流行したが、観光客の動向に関しても、その総量をコントロールすることは中国政府には可能だろう。今年の上半期、円安を背景に、多くの日本旅行ツアーが中国の旅行代理店で組まれていたというが、中国政府がそれを黙認、あるいは後押ししていた可能性は否定できないだろう。高い購買力に魅せられ、日本の対中感情に変化が起きるのではという期待もあったかもしれない。


黄色信号の中国経済 「爆買い」もストップか!?

引き続き「爆買い」狂想曲は続いているが、今後もそれをあてにし続けていいのだろうか。

東京五輪に向けて広くインバウンド対策を考える必要があるのは言うまでもないが、「爆買い」は中国人観光客特有の行動で、一般のインバウンド消費とは区別されるべきだろう。そう考えると、「爆買い」を当て込んだ経営判断を行うのは、危険度が高いといえそうだ。

その理由としてまず、中国経済の足元で黄色信号が灯っていることが挙げられる。

2015年6月に上海総合指数が急落。バブルがはじけたとも評される中で、中国政府によるなりふり構わない必死のPKO(Price Keeping Operation)が展開されいている最中だ。

昨年高騰した株価が、消費者心理を改善させていたことは間違いがなく、今回の株価暴落では、中国経済の落ち込みや消費心理の後退が想定される。

既にその影響は出始めている。米GMによれば、7月の中国での販売台数は、前年同月比4%減の数字となった。同じくフォードの7月販売台数も前年比6%減、ボルボは15.3%もの減少となった。

「爆買い」の対象は安い日用品が中心だが、最近は不動産業界にもその余波は来ており、株価急落の影響はいずれ、高額商品から表れてくる可能性が高い。