「特別分配金」というマジックに気付かない個人投資家

ここまで話してくると、一般的に国内で販売されている投資信託が、販売元にとってのみ都合の良い商品に見えてきたかもしれないが、実はもうひとつ決定的な誤解がある。それが分配利回りの存在だ。

投資信託には分配金というものがある。分配金とは「利益の分配」かと思うかもしれないが、そのほかにもうひとつの意味があって、利益が出ていない状態にもかかわらず「元本を切り崩して出てくる」分配金もあるのだ。これを「元本払戻金(特別分配金)」と言う。

投資信託の分配金には、運用の成果が出て、その利益から支払われる分配金もあるのだが(こちらは「普通分配金」と言う)、運用成果がイマイチなのに手数料ばかり高い投資信託では「普通分配金」もまともに出ないことになる。そのためなのか、投資信託での分配金は、ここ数年「元本払戻金」を指すことのほうが圧倒的に多い。ちなみに、リターンが直接開示される米国のファンドの場合、毎月分配型の「元本払戻金」がある商品などあり得ない。

なお、2012年6月から、投資信託の「特別分配金」は「元本払戻金」と記載することが協会から義務づけされることになった(むかしは「特別分配金」という言葉のみ、使っていたのだ)。これにより「元本を切り崩して投資家に分配していた」事実がより分かりやすくなったと思うが、トータルでみると、未だ、利益の分配と勘違いして(ようは利回りと誤解して)、毎月払い戻しがある「元本払戻金」を受け取っている個人投資家がいる。

元本を切り崩しているということは、これまた相当利回りが良くないと、初年度は元本はマイナスからのスタートとなり、下手すると、マイナスのまま解約することになる。おまけに手数料の目減り分もどうにかしなければという話しだ。これでもまだ、勉強のためにと言いながら、投資信託を続けるつもりだろうか。

日本の金融機関にとってのみ「おいしい商品」となっている投資信託。商品選びにこそ注意したい。

一部の富裕層なら、個人でもプライベートエクイティ・ファンドなどに投資している方もいると思うので、ここで話しをしたことはとっくに、卒業している方もいると思う。また、そうであることを望みたい。

ただ、国内の投信に対して散々悪口を述べたけれど、そんな国内投信にも年決算回数が一回なんてところもあるし(つまり、毎月払戻型の投信ではない)、まともに検討できる商品もある。あなたが初心者というのなら、例えば『モーニングスター』や『投信とまなび』といった情報サイトで勉強してみるのも良いだろう。

大切なのは、人任せで銘柄を決めないことだ。じゃあ、どうすれば良いのか。それは、自分の望む条件に見合った商品を「後から探す」ことだ。 先に商品(銘柄)を決めて、それに合わせてしまうから失敗してしまう。良い投資信託を探すコツのひとつなので参考にしてほしい。

BY M.S:フリーランス・ライター