総合型はシニア向けサービスを強化

プールやジム、ゴルフやテニスなど複数の運動施設を備える既存の総合型スポーツクラブも手をこまねいているわけではない。セントラル、ルネッサンス、ティップネスなど約10社のうち、15年3月末で全国に直営193店舗を数える施設数で最大手のコナミスポーツ&ライフは新興勢力の台頭を横目にシニア対応を強化中だ。

総合型スポーツクラブには幼児から高齢者まで幅広い会員が在籍しているが、無視できない存在なのが60歳以上のシニア層だ。会員構成の大きな割合を占めているし、彼らがいなければ平日昼間の施設は閑散としてしまう。

ところが高齢化の加速で会員の平均年齢は年々上がるばかり。加齢で足腰が衰え、膝や腰、骨などに変調をきたすロコモティブシンドローム(ロコモ)の悩みを抱える人は日本に約4700万人いるとされ、総合型スポーツクラブの会員も例外ではない。ロコモで体力が落ち、筋力が低下して運動が辛くなればやがて退会してしまう。なんらかの手立てが必要だ。

そこでコナミが始めたのは60歳からの運動教室「OyZ」(オイズ)だ。週1回15人以下の少人数クラスで、簡単な体力測定で自分の現状を把握したうえで軽い運動を60分間行う。月謝制で税込み6156円。12年秋からスタートし、今では100を超える施設に広がった。今春からは認知症予防のため有酸素運動と簡単な計算などを音楽に合わせて同時に行う脳活性化コースも導入している。

こうしたオイズの運動プログラムや指導法は外販もされている。要支援・要介護の認定を受けた高齢者は何もしないでいると次第に動けなくなる。コナミのインストラクターのノウハウをデイサービスセンターや特別養護老人ホームなどの介護施設のスタッフに伝えて、介護対象者に軽い運動をしてもらえば悪化が防げる。

現在、日本人の4人に1人は65歳以上で30年には3人に1人になる。高齢化が加速するなか、総合型スポーツクラブにとってシニア層向けサービスの強化は経営基盤の強化のみならず新たな事業の柱にもなりつつあるようだ。

ホットヨガやプライベートジムなどスポーツクラブの業態は多様化し、既存の総合型クラブも交えた新規顧客の獲得競争は厳しさを増している。スポーツクラブはメーカーのモノ作りとは違い、仕入れ不要で役務(サービス)の提供のみだ。

新手の"汗を流す習い事"が将来も生き残るためには、内装や設備など施設内の充実とインストラクターの指導スキルが鍵になるだろう。

(この記事は8月25日号「 経済界 」に掲載されたものです。)

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