原田氏
(写真= 株主手帳/ IFA 原田茂行氏 記事=株主手帳2015年8月号掲載)


今月のテーマ:カジノ解禁

いよいよ、日本におけるカジノ解禁が現実味を帯びてきました。

今年4月、カジノ解禁を盛り込んだ統合型リゾート(IR)推進法案が自民、維新、次世代の党の連盟で議員立法として国会に再提出され、9月27日まで大幅に延長された本国会において、安保法案審議の後、早ければ7月上旬にも審議が始まります。

統合型リゾートとは、国際会議場、展示施設、ホテル、商業施設、レストラン、劇場、映画館、アミューズメントパーク、スポーツ施設などにカジノを含む複合観光集客施設のことです。

カジノ1

今回目指すカジノの合法化は、観光振興を目的としているため、単純賭博施設の建設ではなく、あくまで集客力の高い統合型リゾートの開発を狙ったものです。

統合型リゾートの導入で最も成功した事例はシンガポールで、開業前年の2009年から1年で国際観光客数は約20%、国際観光収入も約50%増加、失業率は1%弱改善し、政府の税収も大幅に増加しました。

現在、カジノは全世界の100を超える国や地域で合法化されており、日本を除くG7各国でも合法とされています。

昨今は、国家の経済的な競争力はその国の中心的な都市の競争力に左右されるようになったため、「都市対都市」の競争が激しさを増しています。よって、日本の経済成長には都市力の向上を図る必要があり、その施策としてのカジノ導入は、都市の魅力を高め、成長力をアップさせる起爆剤となります。

中国、東南アジア諸国の著しい経済成長を背景に、アジア太平洋地域はカジノ市場が急成長しています。国民の可処分所得が上がり、レジャー消費、観光消費が拡大しているためで、マカオにおけるカジノの売り上げは2013年度で約4兆6000億円、ラスベガスの約7倍の規模になっています。

特に注目されているのは極東・アジア地域で、このうカジノが存在するのは韓国のみですが、ほとんどの施設は統合型リゾートの形式は取っておらず、国際競争に耐えうるものではありません。

その状況で、日本でのカジノ解禁を見越して米カジノ大手のサンズやMGMリゾーツ、香港のメルコ・クラウンは、50億から100億ドルの投資を表明しています。

今後、東京オリンピックに向けて統合型リゾートが合法化されれば、まずは本命視されている横浜市の山下ふ頭、大阪市の夢洲を皮切りに、実際の導入効果を検証しながら段階的に最大10カ所程度の開発が期待されます。

一般に、多くの観光地・観光施設には、訪問客数に季節変動があります。1日の営業時間の制限などから昼間に集客が集中したりしますが、カジノを含む統合型リゾートは365日、24時間、全天候型、特に夕食が終わってから深夜にかけての時間が需要のピークとなる特殊な観光資源であることから、その大きな経済効果を狙って全国の多くの自治体が導入を検討しています。

政府、官公庁が掲げる「観光立国実現に向けたアクション・プログラム」の中に、〈MICE誘致による地域の活性化〉があり(MICEとは、企業の会議、研修旅行、国際会議、展示会の頭文字を組み合わせた造語)、これらを目的として発生する観光はMICE観光と呼ばれています。

MICE観光は、レジャー観光に比べて経済波及効果が高く、世界的にも大型のMICEイベントが統合型リゾートへその会場を移しているのが現状で、日本は大規模な国際会議や国際展示会の十分な受け皿がないために他国にその機会を取られているのが現状です(日本最大の展示場である東京ビックサイトの規模は、世界70番目のレベル)。

かつてのリゾート法の失敗に学び、運営収支のすべてを民間で行うため、その経済波及効果に大いに期待できます。

カジノ2

関連銘柄は、カジノ開発、運営でセガサミーホールディングス、ユニバーMICEを積極誘致が、野党でも賛同している議員は多く、今後人口が減少していく日本で、国際観光客を大幅に増やす手段としての統合型リゾートの開発は、地域経済の活性化につながります。

ギャンブル依存症、マネーロンダリング対策など、各方面からの指摘に丁寧に対処することで経済強化をもたらし、今後の新たな経済基盤となることでしょう。

IFA 原田茂行氏
【プロフィール】
大和証券、SMBC日興証券、野村証券を経て株式会社アイ・パートナーズフィナンシャルに所属し、IFAとして独立。日本証券アナリスト協会検定会員、囲碁三段。(記事提供: 株主手帳 )

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