東芝

東芝 <6502> は9月7日に2015年3月期の有価証券報告書を関東財務局長宛に提出した。もともと決算日から3カ月以内の6月30日が提出期限だったものを8月31日に延期、それも守れず再延期した経緯があり、再び期日を伸ばせば上場廃止基準に抵触するという状況だった。

有価証券報告書の提出とともに行った適時開示では、過年度決算修正と2015年3月期決算の概要にくわえ、再発防止策の骨子を公表している。本骨子を踏まえ、9月30日に予定している新体制下での初回取締役会において、具体的なアクションプランを決議する予定とされている。

このように決算が確定し、再発防止対応の検討も着実に進んでいるように見えるが、果たして本骨子は本当に十分なものと言えるのだろうか。


小手先の対応、形骸化しそうな施策……

骨子の最初に掲げられている企業風土改革の中では、(1)予算統制見直し、(2)意識改革・コンプライアンス強化、(3)会計コンプライアンス教育の実施を掲げている。

まず(1)予算統制の見直しでは、トップが目標をゴリ押しする場になっていた社長月例の廃止、ボトムアップによる予算策定方式の変更などを述べているが、いずれも小手先の対応に過ぎない。

次の(2)意識改革・コンプライアンス強化は、会長兼社長から全従業員へのメッセージの発信、従業員アンケートの実施など、そもそも良好な企業風土が確立されていなければ形骸化するような施策だ。

最後の(3)会計コンプライアンス教育の実施に至っては、ナンセンスの極みである。東芝クラスの大企業であれば、「会計の基本原則の浸透」を図る必要性はほとんどないはずである。「皆が分かっていることを守れなかった企業風土を如何に変革するか」という本質的な問題に目を背けている現状を端的に示している。


年功序列意識が如実に出た社外取締役候補者リスト

9月30日の臨時株主総会に付議される取締役の選任議題には、見事なまでに年功序列意識が表れている。

社外取締役候補者の7氏は、以下の順に掲げられている(カッコ内は生年、敬称略)。伊丹敬之(1945年)、野田晃子(1939年)、池田弘一(1940年)、古田佑紀(1942年)、小林喜光(1946年)、佐藤良治(1946年)、前田新造(1947年)。

伊丹氏は唯一の再任候補者なので筆頭に記載したと思われるが、野田氏以下は50音やアルファベットではなく、生年月日順である。また全員が、社長に再任予定の室町正志氏(1950年生)より年長である。「社外取締役がご意見番ならば、全員社長以下の執行役より年上でなければならない」というヒエラルキー意識が透けて見えるようだ。

このような硬直的な序列意識を解消し、フラットな組織作りと自由闊達な気風の醸成を図らない限り、「上から言われたチャレンジを何が何でも達成しなければならない」という盲目的な精神構造は改善されないだろう。