「内部統制強化策」には一定の意義

内部統制強化策として、まず財務部門の組織改革を掲げているが、これは相応に有効な施策だと思われる。

骨子には、「社内カンパニーの財務統括責任者(CCFO)をコーポレート財務統括責任者(CFO)傘下に位置付け」と記されているが、事業責任者であるカンパニー社長が経理・財務部門の及ぼす影響力を弱め、粉飾決算を防止するという意味では、一定の効果があると考えられる。

どの会社でも同じだが、事業部門制を採用し経理、総務、人事等のバックオフィス機能やミドルオフィス機能(コンプライアンス・リスク管理機能)まで事業部門に移管すると、会社全体としての統制機能が働き難くなる。そうした中で、東芝のように本部(社長)が“上納金”の取り立てを厳しくすれば、事業部門内の統制は必然的に弱体化するだろう。こうした状況を改善する上で、経理・財務部門の指揮・命令系統をCFOの元に集約する意義は大きいと思われる。

もう1つ挙げられている内部通報制度改革の効果にも疑問がある。こうした制度の有効性は、企業風土が担保するものである。「通報窓口が社外の弁護士などであれば安心して忌憚のない意見を述べる」というお人好しは、まれである。


経営方針ブレなければ「業務プロセス改革」の成果は出る

最後の業務プロセス改革には、「工事進行基準に係る会計処理」などが掲げられている。これらは実務的な課題であるため、経営方針がブレない限り着実に成果を上げることが期待できる。

繰り返しになるが、東芝ほどの大企業であれば、実務能力の点で不安を覚える要素はほとんどないはずである。

一連の不正会計(粉飾決算)問題は、会計知識やスキルの不足が原因ではなく、経営姿勢や不適切な企業風土が引き起こしたことを真摯に認めた上で改善策に取り組めば、東芝が再び名門企業として輝く日は遠くないだろう。(有賀 英司、金融コンサルタント)

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