セミナー出席者


可処分所得の差は最大「61万2000円」

専業主婦のいる片働き世帯と共働きの世帯はどちらが得をしているのだろうか。9月5日、東京都の富国生命ビルで開かれた政策分析ネットワーク主催のセミナー「これからの女性活躍推進について」 では、両世帯の可処分所得について面白い調査成果※が紹介された。

大和総研金融調査部研究員の是枝俊悟氏によると、1000万円の年収がある世帯の場合、共働き世帯は、専業主婦または専業主夫のいる片働き世帯よりも最大で年間61万2000円、可処分所得が多いという。
同じ世帯年収なのになぜこんなに差がつくのだろう。世帯年収が同じならむしろ、配偶者控除を受けられる片働き世帯の方が得をしそうにも思える。

ポイントは日本の所得税の課税制度にある。一世帯のうち所得が多い人に対して高い税率が課される点である。


夫婦の年収が拮抗するほど税負担が軽く

是枝氏は世帯年収が1000万円で、夫婦と子供2人(3歳以上中学生以下)がいる4人世帯を想定し、片働きのケースと共働きのケースを比較した。

片働きの場合、年収1000万円を稼ぐ夫または妻が課税対象になる。年収1000万円は日本の中でも上位所得層に位置し、課される税率は高くなる。一方、共働きで夫婦ともに年収500万円を稼ぐ場合、課税対象となるのは年収500万円の平均層のビジネスパーソンであり、税率は低くなる。児童手当の所得制限も、夫婦の所得の合計ではなく多いほうの金額で判断されるという。

これらの要因を考慮すると、世帯年収1000万円の4人世帯の可処分所得には、共働きと片働きで最大61万2000円の差が出るという。

日本の課税制度は、同じ世帯年収なら夫婦の年収が拮抗しているほうがより税負担が軽くなる仕組みになっているといえる。そして配偶者控除よりも、税率の差のほうが税額に与える影響は大きいのである。
ちなみに海外の所得税の課税単位は、イギリス、韓国などは日本と同じく個人単位だが、アメリカ、ドイツ、フランスなどは実質的に世帯単位を採用しているという。

共働きが家計を豊かにすることを説明するため、是枝氏はもっと簡単な計算も紹介していた。一人の大黒柱が部長級まで出世して稼ぐより、夫婦2人が出世をそこそこに抑えてでも正社員として働き続けるほうが生涯の世帯収入は多いというのである。


「女性活躍は男の幸せでもある」

セミナーでは企業の人事担当者や子育てしながら働く女性が登壇し、家計以外の分野にも女性活躍が多くのメリットをもたらすことを紹介していた。

女性の仕事復帰の支援事業「#HappyBackToWork(ハッピー・バック・トゥー・ワーク)」を実施しているグーグルの人事担当者らは、女性を含めたさまざまな人材を活用することで職場に多様性が生まれ、企業にイノベーションが起きると強調した。

また、会場には業界の男性で初めて育児休暇を取得したとされる元テレビキャスターがおり、「育休を男性が取ることは、男性にとっても幸せ。育児を通してテレビを見る視点も変わった。女性の活躍は男の幸せでもある」と語った。
今後の課題としては、実際に子育てしながら働く女性の自信がなさすぎるという点や、男性のコミットの少なさが指摘された。

制度が整っているのはもはや当たり前の時代。女性の活躍推進をさらに一歩先に進めるためには、「なんのために女性活躍が必要なのか」をそれぞれの人があらためて考える必要がありそうだ。(ZUU online 編集部)

※ 大和総研「なるほど金融 家計を読み解く意外な数字 第2回」 http://www.dir.co.jp/research/ report/finance/family/ 20150817_009999.html

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