サンマ
(写真=PIXTA)

「目黒のサンマ」という落語をご存じだろうか。お殿様が目黒で食べた、炭火に突っ込んで焼いた焼きたてのサンマの美味しさが忘れられず、お城でサンマを所望したところ、冷えきったお椀の中にサンマのつみれのようなもの入っていてがっかりしたという話である。


今年の初水揚げ量は昨年の3分の1

現在の我々にも秋の味覚としてすっかりお馴染みであるそのサンマの漁獲量が減っていることを、テレビやスーパーの店頭などでご存じの方も多いであろう。

日本近海でのサンマの漁獲量が減っているのはデータにも如実に現れている。2014年のサンマ初水揚げが1046キロであったのに対し、2015年は320キロと1年で3分の1近い数字となっている。また年間漁獲量でも、2008年は31万744トンあったのが2014年は22万7400トンと3分の2近くに減少している。これは一体なぜだろうか。

日本のサンマ漁獲量の激減は、台湾を中心とした中国、韓国が日本の排他的経済水域外の公海上で、日本へ回遊する前のサンマを大型船で乱獲していることが原因とされている。


台湾の漁獲量が5年で2倍以上、日本を追い抜く

サンマ漁獲量は台湾の増加が著しい。2013年に日本の漁獲量を初めて追い抜き2014年は22万9937トンと、2009年の倍以上となった。

日本のサンマ漁は豊かな漁場に恵まれてきたため、ほとんどは小型船により行われてきた。そのため、日本近海、いわゆる排他的経済水域内で行われている。

排他的経済水域とは、国連海洋法条約に基づいて設定される主権的権利、ならびに管轄権がおよぶ水域のことを指し、日本の沿海部に沿って設定される基線から200海里、およそ370キロの範囲で設定される。一方、公海とはどこの国にも属さない公の海のことを指す。

サンマは北太平洋を回遊する回遊魚のため、排他的経済水域と公海の境界を自由に移動する。日本水域内での生物資源の保護すなわち隣接する公海での資源保護も視野に入れる必要がある。

そのため隣接する領海外の公海上で行われる漁業について、沿岸国が管理を行う権利があるとして各国は独自に各種法令を発令、日本も『漁業水域に関する暫定措置法』を1977年に施行し、国内外に宣言した。

日本もサンマ漁獲量激減という状況に手をこまねいているわけではない。今年7月に発足した北太平洋公海の漁業資源保護を話し合う「北太平洋漁業委員会(NPFC)」では日本、カナダ、アメリカ、ロシア、中国、韓国、台湾と7つの国と地域が参加し、話し合いを行っている。

そこでは資源量を維持出来る漁獲量を2017年中に算定した上で、同年から長期的な資源管理を目指すための取り組みを開始することで合意をみた。これが公海上での漁獲規制に繋がる可能性が出てきた。またこの合意は、法的な拘束力を持つことから期待が寄せられている。


漁船隻数の削減協議には中国・台湾が反発

今後は日本と台湾、ないし中国とで具体的な削減漁船隻数の協議に入るが、台湾、中国は「後から漁業に参加した国への配慮も必要」と反発しており、難航が予想されている。

ただ、台湾はサンマ漁獲量が多く、そのサンマの大消費地は中国であることから、自国の漁業利益を考えての反発であろうことは容易に想像できる。しかし肝心の資源が枯渇してしまっては永続的な事業にはならない。もしサンマが獲れなくなったとしたら早々に別の物を追いかけることになることは目に見えている。

この現実に日本はどう対峙していくべきか。

日本は毎年、資源の枯渇を防ぎ海の恵みを受け続けるため、サンマの漁獲量を定めてそれを守ってきた。無尽蔵とも言われたサンマが日本近海で獲れなくなっているのは、即ちそのサイクルに大きな乱れが生じている証である。

昔からその文化を守ってきた日本がこの管理主導権をしっかりリードしていかなければならない。そうでなければ、「目黒のサンマ」のように、オチが冷えたお椀のつみれ、改め、外国産の古い缶詰となる日もそう遠くないかもしれないのだ。(ZUU online 編集部)

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