病人から優等生へ

ドイツの独り勝ちの要因はユーロ安によりドイツ工業製品の価格競争力が高まったことが原因だと言われる。しかし、それは結果論に過ぎない。実は1990年代のドイツは「欧州の病人」とさえ呼ばれるほど経済は低迷していた。1998年から2005年までドイツで首相を務めたゲアハルト・シュレーダーが断行した「シュレーダー改革」が現在のドイツ独り勝ちの礎となったのだ。

彼の改革は雇用制度と社会保障改革が柱だった。「アジェンダ2010」と名付けられた政策は解雇規制を緩和する一方で、生活保護支給期間を短縮、就業訓練の拡充へとシフトした。この政策によってドイツ企業の単位労働コストは大きく低下し、他のEU諸国の企業と比べ高い競争力を身につけることとなった。同時にコーポレート・ガバナンスの在り方など企業制度の改革も行われた。それにより、企業経営の透明性が高められ経済のグローバル化に対応し他のEU諸国だけでは無く米国企業などとのM&Aも急速に増加した。


アベノミクスに奢るなかれ

このように現在のドイツは単に幸運に恵まれただけではない。欧州の金融緩和により輸出競争力が高まったのは事実だ。しかし、我々日本人はそれを単なる幸運と考えるべきでは無い。現在の環境がドイツにとって「オイシイ」と片付けてしまうことは断じてあってはならないのだ。

アベノミクスにより日本は構造改革を進める時間的余裕を手にした。にもかかわらず、円安による恩恵だけを享受するのみで、肝心の構造改革は進んでいない。無駄な財政支出は一向に減らず次世代へのツケはますます大きくなっている。コーポレート・ガバナンスにおいても改革は全く進んでいない。むしろ、逆行している。粉飾会計は不適切会計という言葉にすり替えられ、企業の社会的責任は十分に果たされたとは言えない。

「オイシイ」環境にあるのは実は日本だ。異次元金融緩和で得られた時間をどう使うかが問われている。ドイツがいかにして「病人」から「優等生」へと生まれ変わったかを今こそ学ばねばならない。(ZUU online 編集部)

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