アセアン各国の直接投資(FDI)の動向・変化とアセアン企業のM&Aの増加
◆アセアン諸国の直接投資の動向
アセアン各国の直接投資の動向(対内:投資の受入れ額、対外:外国への投資額)を見ると、図表-2と図表-3に示されるように、近年タイやフィリピンといった域内の中進国で対外投資が増加傾向にあり、従来の「アセアン諸国=投資受入国」というイメージが変化しつつあることがわかる。
さらに、アセアン諸国による域内他国への投資が増えていることも重要なポイントである。図表-4のとおり、当該投資額は2013年単年で213億ドルとなっており、2000年から2005年の6年間に行われたアセアン諸国による域内投資額の合計金額を上回っている(ASEAN&UNCTAD(2015))。
図表-5のように、アセアンは日本に次ぐ第2位のアセアンへの投資者である。例えば、タイでは2013年の対外M&A投資額の58%がアセアン域内向け、42%が域外向けとなっており、ベトナムは60%が域内向け(かつ隣国への投資が多い)となっている。
アセアン域内諸国同士の投資フローの傾向を見ると、シンガポール・マレーシアへの投資が伝統的に多いが、近年では、インドネシア、タイ、ベトナムへの投資が増えている(上記2013年の213億ドルの内訳は、対インドネシア87.2億ドル、対シンガポール57.1億ドル、対マレーシア21.9億ドル、ベトナム20.8億ドル、タイ12.6億ドル、対ミャンマー11.9億ドル、対カンボジア3.0億ドル(CLMV諸国計で35.6億ドル)となっている)。
近年の傾向としては、アセアン域内では、2015年末のアセアン経済共同体(AEC)のスタートなど域内統合の動きが進む中で投資の流れも活発になってきている。
例えば、タイからの投資がラオスやベトナムに向かい、シンガポールには域内の各国から流入している。また、インドネシアからシンガポールには大きな投資の流れがあるが、同時にシンガポールからインドネシアに入っている金額も大きく、相互の投資関係の深化がみられる。
各国によるシンガポールへの投資は、地域統括本部拠点や金融・エネルギーなどの国際ビジネスの中心拠点としての同国の重要性によるものといえる。