尻尾が犬を振っているような状況が改善される?

日経平均株価採用銘柄であるファーストリテイリングの現在の構成ウェイトは 9月18日現在で 10.0%という高さだ。2番手以降は ファナック <6954> 4.4%、ソフトバンク <9984> 4.1%、KDDI <9433> 3.6%、京セラ <6971> 2.5% と続き、23番手までの累計で 50%を超えるが、いずれにしてもファーストリテイリングの高さは異常だ。同社の業績見通しで、経済指標としての日経平均株価が揺らぐのは、まさに尻尾が犬を振っているような状況だ。

2010年5月、米国市場でダウ平均(ダウ工業株30種平均)が一時1000ドルを超える急落(フラッシュ・クラッシュ)を経験した。全容が全て明らかにされたわけではないが、一人のトレーダーの出した P&G株へのFat Finger(=誤発注、太い指で隣のキーを押してしまうことから)がきっかけと言われている。ダウ平均がわずか30銘柄で構成されていることから、構成1銘柄の急落がインデックスの急落を呼び、裁定取引から他のインデックスや他の株に波及してしまったのだ。

コンピューターのプログラムにより株の自動取引を行う「アルゴリズム取引」の一種に HFT(高頻度取引)がある。その最もプリミティブな取引パターンは株価の最小単位で儲ける「1カイ2ヤリ」だ。かつては、地場証券と呼ばれる中小証券のトレーダーが自己勘定で行っていた。刻み値1単位の変動率が大きかったことから、マニュアルで行う「買ったら売る」、「売ったら買う」日計り取引は十分な収益源だった。

この流れで、かつては神様と呼ばれた伝説の日経平均先物トレーダーがいた。寄付き前に大量の売りと買い注文を並べる。優先順位を確保するため、寄付き前には、無駄とも思われる同価格への売りと買いの注文も並ぶが、時間優先の取引ルールのため、ザラバ中に新たな価格が取引されると真っ先に反対売買の注文を出すことが可能となる。大証での日経平均先物の呼値は10円だったが、SIMEX(シンガポール取引所)の呼値が5円だったため、それを利用した裁定取引も有用だった。

しかし、HFTのようなコンピュータを駆使した自動取引が拡大するにつれ、マニュアル・トレードは駆逐されることとなる。コンピュータに先を越されるため、指値しているオーダーはなかなか出来ず、執行されたと思ったら次の瞬間は不利な方向に価格が動いているという状況が生まれる。

HFTを行う業者やファンドはダークプールと呼ばれる私設取引所を利用する。証券会社が運営するそうした取引所は、自社への委託オーダーを突き合わせて東京証券取引所に回送しないことでの、取引コスト削減を顧客に喧伝していた。こうしてHFT取引が市場を牛耳るという状況が生まれていたのが5年ほど前のことだ。


大きな問題は依然残ったまま

この潮流も HFT取引の競争激化に加えての東証の呼値縮小によって細ることとなり収益性は段階的に減少することとなった。さりとて日計り取引が無くなったわけではない。「1カイ2ヤリ」のように単純ではないが、売りと買いの注文の間に空いてしまった価格に利食いの注文を軽妙に入れていく。 結局、HFT取引者間でのアルゴリズムの改善競争が激化しているだけだ。

そして大きな問題は彼らの指値オーダーが依然としてかなり大きなウェイトを占めていることだ。誤発注に限らず、予想外のニュース、トリガーと呼ばれるストップ・オーダーのブレークなどによって引き起こされる、スパイクとも呼ばれるフラッシュ・クラッシュは、通常時に置かれている指値オーダーが一瞬のうちに消え去ってしまうことによって引き起こされるのだ。

今回の東京証券取引所のリニューアルは一定の改善をもたらすとはいえ、ファンダメンタルに基づかないテクニカルな相場変動リスクを軽減するためには課題が残っていると言えるだろう。(ZUU online 編集部)

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