3つの約束事を守れば、風味は自由である

男女ともに重宝される、ユニセックス感のあるお酒。氷結は日常のカジュアルな飲酒を、女性に解放した商品となった。氷結の登場した時代を振り返ると、折しも1986年に男女雇用機会均等法が施行されて以降、90年代から00年代にかけて、女性の社会進出が増えていく時代でもある。

「90年代に入り、女性が働くのは当たり前という時代になりました。サラリーマンという言葉があるくらいの、男だらけの社会から、もう少し時代が変わっていくところだったのでしょう。若い女性に人気のある商品は、年配の男性も興味を持たれるでしょうし、それを飲んでも悪いイメージはないでしょう。そういう、ユニセックスな商品として着目したのが、氷結の一番大きな取り組みだったのかな、と思います」

最初の開発案は見事に時流をとらえて、今では人数の構成比で男性の購入者が約6割、女性の購入者が約4割であるという。

そして、若い世代からも好まれているお酒である。RTD市場が伸び続けている理由としては㈰ビールと併せて飲む人の増加㈪若者からの支持㈫お酒の楽しみ方の広がり、がある。

「特筆すべきは、20代の男女からの支持です。『最も好きなお酒』を聞くと、RTDと答える方は2007年に11%ほどでしたが、2014年には18%まで増えています。お酒を飲み始めてから2〜3年、社会人になってから5〜6年の世代。この世代の方々が成人した頃には、すでに新しいチューハイ市場がしっかりと確立されていました。そのために、お酒との付き合い方として、昔のようにビールから入るのではなくて、いきなりチューハイ、そっちが好き、という20代の方が増えているのです」。

昔の酒席では、最初の1杯はみんなでビール、という雰囲気があったが、今ではそんなことはなく、男女ともに1杯目から好きなお酒を頼むのが普通だ。その世代はお酒の種類と味だけではなくて、フレーバー(香りと風味)の多様性を楽しむ。そんな若い世代のお酒への嗜好も、氷結はすくい取っている。

「すっきり、飲みやすく。これが氷結ブランドの約束事です。つまり、商品の素材としてクリアウォッカとストレート果汁を守れば、どのようなフレーバーが入っても、氷結の範ちゅうに収まるのです。アルコール度数にしても『氷結ストロング』は9%になりますが雑味はありません。むしろ、氷結ブランドの約束事を守ってさえいれば、あとはフレーバーも、飲み方も、自由なのです」。

飲み方も、例えばサッカー観戦や音楽フェスなどに持っていけるように、パウチ容器で凍らせてから揉みほぐして飲むスムージータイプも登場している(コンビニ限定。2015年の出荷は終了)。また、果汁は、輸入品だけではなくて、福島県産の桃をはじめ、日本各地の特産品を採用することもある。どこか手に取りやすい氷結の親しみやすさは、この辺りにも理由があるようだ。

かつて、お酒好きなおじさんの楽しみであった缶チューハイ。そのように需要を限定することなく、新しいカテゴリーを創造しよう、と作られた氷結は時流に乗って飲酒のユニセックス化をうながして、フレーバーを増やしながら女性ファン、さらに若者世代へと急速に広まり、ついに出荷本数が100億本を突破したのである。

「氷結は、これしかやらない、ではなくて、氷結の約束事を守っていれば、あとは時代に合わせて、もっと多様な提案をしてもよいのではないかと思います。逆に言うと、次の何かを作っていかないと、近い将来に氷結が80年代のおじさんチューハイになってしまうこともあるかと思うのですね。そういう危機感は持っています。だから、時代に合わせて積極的に変化することを続けていきたい。ただ、氷結の約束事であるクリアウォッカとストレート果汁は、絶対に守るということです」。

飲み手としても、氷結との約束を守る人が多いのだ。透明感のある飲み口とフレッシュな香りを楽しみつつ、飲みすぎには、くれぐれも注意されたい。 (ZUU online 編集部)