(写真=PIXTA)
9月、2017年4月の消費税率10%への引き上げ時に「日本型軽減税率」を導入するかが話題となった。財務省が提示した「還付制度案」は、インフラ整備などの問題点などが次々に指摘されたため導入は断念され、今後は生活必需品の消費税率を低く抑える「軽減税率」の具体策を軸に議論が進められる見通しとなった。
ところで「軽減税率」案と「還付制度」案では一体国民の負担にどのくらい違いがあるのだろうか。実際の数値を当てはめて考察してみよう。
1世帯あたり年間1万7780円の負担増
厚生労働省の国民生活基礎調査の概況 (2014年) によると、子どものいる1世帯当たりの平均所得金額は696万3000円となっている。これを参考にSMBC日興証券の試算から世帯年収650~700万円、夫婦2人子ども2人で世帯主のみ働く場合をモデルケースとすると、食料品支出額 (酒類を除く) は年間88万9000円となっており、8%時の消費税負担は7万1120円。10%の消費税では8万8900円にアップし、その差額は1万7780円となる。
財務省が示した「還付制度」は2%の増税分を後日返金(還付)する仕組みで、還付額には1人当たり4000円の上限が設けられていた。1人当たり4000円の還付の場合、このモデルケースでは家族4人分(1万6000円)が還付されるので、1780円分の足が出ることになる。日々の買い物で実感する2%の増税負担を、年に一度支給される1万6000円で拭い去れるのかは確かに疑問である。
さらに財務省の「還付制度」案では、還付手続きを受けるには、買い物をする際にマイナンバーカードを提示し、購入の履歴を記録しなければならない。マイナンバーカードは還付制度開始までにもれなく希望者全員に配布できるかも見通せていない。また各小売店や飲食店が、マイナンバーカードの読み取り端末を設置し、システムを構築するなどのインフラを整備する必要がある。中小・零細事業者にとってこの負担は大きい。
一方、「軽減税率」案でもし、食料品支出額(酒類を除く)のすべてが対象となるのであれば、1万7780円の負担は軽減されることになる。ただしどの品目を軽減税率の対象にするのかを巡り議論がなかなか進まないのが現状だ。