事業者の6割が市場から排除される?

一方、「インボイス方式」は、課税事業者が発行するインボイスに記載された税額のみを控除する方式である。「請求書等保存方式」と大きく異なるのは、インボイスに適用税率・税額の記載が義務付けられている点と、課税事業者にしか登録番号を付与していないため、免税事業者がインボイスを発行できない点である。特に問題なのは後者の点だ。

消費税では課税期間の基準期間における課税売上高が1千万円以下の事業者は、納税の義務が免除される。この納税の義務が免除される事業者を「免税事業者」という。なお、免税事業者でも課税事業者となることを選択することができる。

2010年の総務省国勢調査、09年の国税庁特別集計によると、日本の全事業者のうち約6割は免税事業者で、そのうち5割を個人事業者が占めている。そしてインボイス方式ではこの免税事業者が市場から排除される可能性が指摘されている。


対象品目の仕分け、レジの取り換え……多彩な負担

免税事業者は販売代金に付加価値税相当額を上乗せするため、仕入側にとっては同じ商品を課税事業者から仕入れた方が利益は多くなる。免税事業者から仕入れた商品は仕入税額控除の対象とならないからだ。

かといって仕入先を課税事業者に変更すれば、対象品目の仕分け、レジの改造や取り換え、申告納税事務の手間といった負担は避けられない。その結果、商品の価格が上昇する可能性もある。


軽減税率対象品目の問題

安倍晋三首相は9月24日、自民党の両院議員総会で、正式に党総裁に再選された後、党本部での記者会見で、2017年4月の消費税率10%への引き上げについて「リーマン・ショックのようなことが起こらない限り、予定通り実施する考えに変わりはない」との方針を示した。

その翌日、財務省がマイナンバー制度を活用して、買い物のあと、2%の増税分を還付するなどとした案を公明党が反対し、秋をめどとしていた制度案の概要の取りまとめは見送られることになった。自民党の野田税制調査会長は、「もう一度予断を持たずに、丁寧に議論を深め、国民が『なるほど』と納得できるよう努力を重ねたい」と述べた。

実施予定まで、残り1年半。対象となる範囲や、レストランのような飲食サービスとの仕切りなど、具体的な仕組みの構築すらできていないが、消費者も事業者も納得できる制度が果たしてできるものなのだろうか。 (ZUU online 編集部)

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