企業側が注意すべき3つのポイント

「法人税法上の経費算入枠が広がる」だけでも、企業としては見逃せないだろう。ただし、実際の活用においては注意すべきポイントがある。

(1) 企業の本社の所在地や財政的に豊かな自治体への寄附は対象外

企業版ふるさと納税は地方活性化の一つとして検討されている政策だ。つまり、少子高齢化で赤字となっている自治体を政府だけでなく企業からも応援してもらうことが狙いとなっている。そのため、東京都や愛知県豊田市など、国から地方交付税を受けていない約60の自治体は対象外となる可能性が高い。

また、当然のことながら企業の本社所在地は所在していることですでに法人住民税の納付義務を負っている。仮に、法人決算上は赤字なのに企業版ふるさと納税を使うことについてOKを出してしまうと、「本来の納税義務を負わずにメリットだけを享受する」という本末転倒な事態になりかねない。そのため、本社所在地に対する寄附も除外とされている。

(2) ステークホルダーの理解が必要

(1)で述べたように、企業が行う寄附は、本来の事業活動とは関係がない。そのため、その寄附を行う場合には、株主や社員などのステークホルダーの理解が必要となる。税務申告書に寄附金を経費計上するということは、当然その元となる決算書にも同様の記載をすることとなる。つまり、その分、利益が減るのだ。事業と関係のない支出を行うことで、配当や給料・賞与、借入金の返済計画に影響が出るとしたらステークホルダーは黙っていない。企業は当然その活動についての説明責任を負う。それぞれの関係者から、企業版ふるさと納税を行うメリットや影響について理解を得る必要がある。

(3) 企業活動とのバランスで寄附金を検討すべし

法人税法上の寄附金は企業の本来の事業活動と関係のない支出であることがポイントである。つまり、「支出したからといって見返りがない」のが前提だ。節税を行いたい一心で寄附をしたところで、売上に貢献する支出とはならない。企業版ふるさと納税を活用する前に、現在の企業活動の内容を財務諸表やその他の活動報告書からチェックし直し、社員に対する決算賞与といった直接企業活動にメリットの出やすい節税策と比較検討してみてもよいだろう。

すぐに飛びつくのは考えもの

企業版ふるさと納税については、自治体側にも細かい要求がなされる予定だ。ふるさと納税そのものが地方活性化のためであるゆえ、その使途は少子化対策や就業支援、観光開発といった地域振興につながるものでなければならない。また、事前に内閣府にその使途についての報告をし、認定を受けなければならない。これまでの日本の歴史から企業の寄附は官民の癒着を招きやすい。そのため、実際の創設に至るまでには更なる検討が重ねられるだろう。

企業側にとって資金繰りは通年の悩みのタネである。そのため、企業版ふるさと納税は、オイシイ節税策のひとつとなりうる。だからといって、すぐに飛びつくのは考え物だ。「寄附金は本来の事業活動には貢献しない」ことを前提として、事前の慎重な検討や利害関係者の理解を得た上で、それでも行うメリットがあるかどうかを判断した方が良いだろう。 (ZUU online 編集部)

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