インターネット小売消費が大幅な伸び
8月の社会消費品小売総額は前年同月比10.8%増(実質10.4%増)である。5月からの動きをみると、5月10.1%→6月10.6%→7月10.5%→8月10.8%とおおむね安定している。
特に、インターネット小売が伸びており、1-8月期、全国インターネット商品・サービス小売額は前年同期比36.5%増となった。現在の中国の景気を支えているのは、消費なのである。
不動産開発投資の落ち込みを公共事業が補完
1-8月期の都市固定資産投資は、前年同期比10.9%増であった。投資は月の累計となっており、5月からの動きをみると、1-5月期11.4%→1-6月期11.4%→1-7月期11.2%→1-8月期10.9%と低落傾向が続いている。その最大原因は、不動産開発投資の低迷であり、1-5月期5.1%→1-6月期4.6%→1-7月期4.3%→1-8月期3.5%と急速に落ち込んでいる。また、過剰生産能力を抱える業種が設備投資を手控えていることも、鈍化の要因となっている。
しかし、投資もマイナス面だけではない。鉄道・道路・水利・公共施設等のインフラ投資(電力以外)は同18.4%増であり、不動産開発投資の落ち込みを補完している。また、1-8月期の新規着工総投資計画額は前年同期比2.7%増(1-7月期は2.4%)、都市プロジェクト資金の調達額は前年同期比6.8%増(1-7月期は6.8%)といずれも伸びている。地方政府の資金難により着工が遅れていた公共事業が、ようやく動きだしたのである。
一次産品の下落と内需不振で輸入が大幅に落ち込む
8月の輸出は前年同期比-5.5%、輸入は同-13.8%となった。5月からの動きをみると、輸出は5月-2.5%→6月2.8%→7月-8.3%→8月-5.5%とマイナス傾向が続いており、輸入も5月-17.6%→6月-6.1%→7月-8.1%→8月-13.8%と大幅なマイナスとなっている。輸入のマイナスが大きいのは、原油などの一次産品価格の下落と内需の不振によるものと考えられる。
ただ、輸出以上に輸入が減少した結果、貿易黒字は続いている。GDPに影響を与えるのは純輸出(輸出―輸入)なので、外需は直接的なマイナス要因になっているわけではない。
【筆者略歴】田中修(たなか おさむ) 日中産学官交流機構特別研究員
1982年東京大学法学部卒業、大蔵省入省。1996年から2000年まで在中国日本国大使館経済部に1等書記官・参事官として勤務。帰国後、財務省主計局主計官、信州大学経済学部教授、内閣府参事官を歴任。2009年4月〜9月東京大学客員教授。2009年10月~東京大学EMP講師。2014年4月から中国塾を主宰。学術博士(東京大学)。近著に「スミス、ケインズからピケティまで 世界を読み解く経済思想の授業」(日本実業出版社)、「2011~2015年の中国経済―第12次5ヵ年計画を読む―」(蒼蒼社)、ほか著書多数。
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