◆貿易赤字は恒常化

貿易収支(通関ベース)は、東日本大震災直後から4年以上にわたって赤字を続けている。2014年度の貿易収支は原油価格の下落に伴う輸入の減少を主因として2013年度の▲13.8兆円から▲9.1兆円へと赤字幅が縮小したが、大幅な円安にもかかわらず輸出が伸び悩んでいるため、貿易黒字に転換するには至っていない。

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輸出低迷の背景には、新興国を中心に海外経済が減速しているという循環的な要因もあるが、大幅な円安によって価格競争力が高まっているにもかかわらず世界に占める日本の輸出シェアが趨勢的に低下していることは、情報関連分野を中心とした国際競争力の低下、生産拠点の海外シフトといった構造的な要因が大きく影響していることを示唆している。海外生産シフトの拡大に伴い国内生産能力は大きく低下し、輸出が海外経済の成長や円安による恩恵を受けにくくなっている。

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貿易収支は、短期的には海外の景気動向、原油価格、為替レートの変動などによって改善に向かう可能性もあるが、構造的に輸出が伸びにくくなっていることに加え、中長期的には高齢化の進展に伴う国内供給力の低下から趨勢的には輸入の伸びが輸出の伸びを上回ることになるため、貿易赤字の拡大傾向が続く可能性が高い。貿易赤字の名目GDP比は2014年度の1%台から2020年代には3%台まで拡大することが予想される。

TPP(環太平洋経済連携協定)が2015年10月に大筋で合意し、関税が段階的に撤廃・縮小されるほか、知的財産、電子商取引、環境など幅広い分野でルールが整備されることとなった。

政府は詳細な合意内容を踏まえて経済効果の試算を出す方針だが、日本がTPP交渉への参加を決めた2013年時点では、関税撤廃による実質GDPの押し上げ効果を3.2兆円(実質GDPが0.66%)としていた。ただし、この試算はあくまでも関税の撤廃を前提としたもので、今回の合意内容には関税の段階的な引き下げや輸入枠の設置などの例外も多いため、実際の効果はこれを下回る可能性がある。

また、関税の撤廃により輸出、輸入ともに拡大が見込まれるが、政府試算によれば輸出の増加2.6兆円に対し、輸入の増加2.9兆円となっており、外需はむしろ悪化する結果となっていることには注意が必要だ。GDPが押し上げられるのは外需の悪化幅(▲0.3兆円)を国内需要の増加幅(消費3.0兆円、投資0.5兆円)が上回るためである。関税の撤廃によって安い海外製品が輸入されることにより国内需要が喚起される効果は期待できるものの、TPPによって貿易収支が大きく改善することは見込まれない。

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