◆訪日外国人旅行者数は2025年には3000万人へ

一方、一貫して赤字が続いてきたサービス収支は旅行収支の改善を主因として赤字幅が縮小している。円安の進行、ビザの発給要件緩和、消費税免税制度拡充を背景とした訪日外国人旅行者数の急増が続いている。2014年の訪日外国人旅行者数は前年比29.4%増の1341万人となり、この3年間で2.2倍となった。2014年10月に免税対象から外れていた食品、化粧品、薬品等の消耗品も含め全ての品目が免税対象となったこともあり、2015年上期は前年比46.0%と伸びがさらに加速している。

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「日本再興戦略(2013年6月)」では、「2013年に訪日外国人旅行者1000万人、2030年に3000万人超を目指す」としていたが、「日本再興戦略」改訂2014では、第一段階の目標である訪日外国人旅行者1000万人を2013年に達成したこと、2020年に東京オリンピック・パラリンピックが開催されることが決定したことを受け、「2020年に向けて、訪日外国人旅行者数2000万人の高みを目指す」という目標を追加した。2015年の訪日外国人旅行者数は約2000万人となり、「2020年に向け2000万人」という政府目標は前倒しで達成される可能性が高い。

一方、日本人旅行者の出国者数は円安の影響もあり減少が続いており、足もとでは訪日外国人旅行者数を下回っている。この結果、2015年の旅行収支は1兆円程度の黒字(2014年は▲441億円の赤字)となることが見込まれる。訪日外国人旅行者の急増によって旅行収支の受取額は大幅に増加しているが、国際観光収入の名目GDP比は2014年時点で0.4%と国際的にみれば依然として低水準にあり、さらなる拡大の余地がある。

先行きの旅行収支の動向を左右する要因としては、為替レート、海外の所得水準の変化、日本の物価動向などが挙げられるが、為替については日米金利差の拡大を背景に当面は円安基調が継続し、消費単価が高く外国人旅行者の約8割を占めるアジア諸国は相対的に高めの成長を続け、日本の物価は上昇傾向を維持すると予想している。これらはいずれも外国人旅行者数、旅行者の平均消費額を押し上げる要因として働くため、旅行収支の受取額は先行きも着実な増加が見込まれる。

訪日外国人旅行者数は2020年には2700万人、予測期間末である2025年には3000万人を突破し、「2030年に3000万人超を目指す」としている政府目標は前倒しで達成される可能性が高い。旅行収支は2015年に黒字に転換した後、2025年には2.5兆円程度まで増加するだろう。

旅行収支の受取額は2013年の1.5兆円、GDP比0.4%から2025年には5.0兆円、GDP比0.8%まで拡大すると予想する。ただし、旅行収支以外の輸送収支、その他サービス収支は赤字が続き、サービス収支全体では予測期間末まで赤字が続くことが見込まれる。

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