◆名目GDP600兆円の達成は2025年度と予想
日本は1998年度以降、名目成長率が実質成長率を下回る「名実逆転現象」が続いてきたが、2014年度は実質GDP成長率▲0.9%に対し名目GDP成長率が1.6%となり、17年ぶりに名実逆転が解消された。2014年度は消費税率引き上げによってGDPデフレーター、名目GDPの伸びが押し上げられたことも考慮する必要があるが、この影響(*3)を除いても名目GDP成長率は0.2%程度(GDPデフレーターの伸びは1.1%程度)となり、実質の伸びを上回った。
日本経済はデフレから脱却しつつあり、先行きについても名目成長率が実質成長率を上回る傾向が続く。今後10年間の名目GDP成長率は平均1.9%(*4)となり、予測期間平均の実質GDP成長率(1.0%)、過去10年間の名目GDP成長率(▲0.1%)を上回るだろう。この結果、政府が「新3本の矢」で新たに掲げた名目GDP600兆円の達成は2025年度になると予想する。
◆消費者物価は1%台の伸びが持続
当研究所が推計するGDPギャップはリーマン・ショック後の2009年度にはマイナス幅が▲5%台(GDP比)まで拡大した後、2013年度には2.1%と潜在成長率を大きく上回る成長となったことから▲0.5%とマイナス幅が大きく縮小したが、消費税率が引き上げられた2014年度は▲0.9%のマイナス成長となったため、マイナス幅が▲1.8%へと再拡大した。
2017年度には消費税率が再び引き上げられるが、2020年度にかけてはオリンピック開催の追い風もあり景気が堅調にするため、需給バランスは改善傾向が続き2019年度にはGDPギャップがプラスに転じるだろう。ただし、2021年度はオリンピック開催の反動と消費税率の引き上げが重なるため、需給バランスが悪化し、その後はゼロ近傍の推移が続くだろう。
消費者物価(生鮮食品を除く総合)は2013年4月以降、前年比で上昇を続けてきたが、原油価格下落に伴うエネルギー価格の低下を主因として2015年8月には前年比▲0.1%と2年4ヵ月ぶりのマイナスとなった。一方、物価上昇がある程度継続してきたこともあり、かつてに比べ企業の値上げに対する抵抗感は小さくなっており、実際、食料、日用品、サービスなど幅広い品目で値上げが行われている。
消費者物価指数の調査対象品目を、前年に比べて上昇している品目と下落している品目に分けてみると、上昇品目数の割合が6割を超えており、物価上昇の裾野はむしろ広がっている。また、現実の物価上昇率がゼロ近傍となっている中でも家計の予想物価上昇率は高止まりしている。
消費者物価上昇率(生鮮食品を除く総合、消費税の影響を除く)は原油価格下落の影響が弱まる2015年度末までには再びプラスとなり、原油価格下落の影響一巡に景気回復に伴う需給バランスの改善が加わる2016年度は1%台前半の伸びとなることが予想される。2017年度は消費税率引き上げの影響で景気が弱含むことから上昇率はいったん1%を割り込むものの、その後はオリンピック開催に向けて好況が続くことから、消費者物価の上昇ペースは加速し、2020年度には2.1%と日銀の物価安定の目標が達成されるだろう。
消費者物価上昇率が安定的に2%を維持することは難しいが、物価上昇の定着によって企業、家計の予想物価上昇率が安定的に推移する中、金融政策面で緩和的な状況が維持されるため、1%台の伸びは確保されるだろう。消費者物価上昇率(生鮮食品を除く総合)は過去10年平均のほぼゼロ%から、消費税を含むベースでは1.8%、消費税を除くベースでは1.4%になると予想する。