「仏作って魂入れず」それでも不正は発覚する

こうした仕組みにより、経営陣は内輪だけで人事や報酬を決められなくなる。米国のコーポレートガバナンス改革は、社会の批判にさらされた企業が、生き残りをかけて企業倫理の確立に取り組んだ結果だ。このよううな米国流の企業統治改革は、日本企業でも海外事業比率の高い大企業を中心に普及してきた。

社外取締役を増やしたり、監査委員会や指名委員会を設置した企業は少なくない。しかし、それでも東芝のように不正が発覚する企業が出現している。コーポレートガバナンス強化の本来の目的を忘れ、形を整えただけでは「仏作って魂入れず」となることが避けられない。

黒田電気の総会では4割が村上氏を支持

ところで、日本では今年6月に、東京証券取引所や金融庁が中心となってとりまとめた「コーポレートガバナンス・コード」が公表されている。上場企業として取り組むべき企業統治の指針で、安倍政権の成長戦略にも盛り込まれているものだ。この「コーポレートガバナンス・コード」は全部で73の原則で構成されている。東証1・2部の上場企業は全てについて、また新興市場の上場企業は5つの基本原則について遵守し、それができない場合は十分な説明を行うように求めている。

ちなみに、5つの基本原則とは、①株主の権利・平等性の確保、②株主以外のステークホルダーとの適切な協働、③適切な情報開示と透明性の確保、④取締役会等の責務、⑤株主との対話を指している。最後の「株主との対話」では、上場企業に対し「持続的な成長と中長期的な企業価値の向上に資するため、株主総会の場以外においても、株主との間で建設的な対話を行うべきである」と定めている。

8月に開催された黒田電気の株主総会では、村上世彰氏の長女が代表を務める投資会社が「株主の目線に立ったガバナンスが行われていない」と訴え、同氏らを社外取締役に選任するように求める株主提案を行った。この株主提案は反対多数で否決されたが、投資会社が利益還元を高めるように要求したこともあり、株主の約4割は賛成に回った。

期待に応えない経営者は退場も

米国でコーポレートガバナンスが強化された背景には、企業経営者の不正に対する社会の批判があった。これは何も企業に積極的な利益還元を求める投資家を支援するものでもなければ、逆にその行為を否定するものでもない。むしろ、上場企業の経営陣に対し、不正に手を染めず、経営の透明性を高めつつ、成長による利益という果実をなるべく多くもたらすように冷徹に求めるものである。

コーポレートガバナンスの基本的な考え方が浸透すれば、日本でも、内輪の論理を振りかざし、利害関係者の期待に応えられないような経営者への退場圧力が強まることになるだろう。(ZUU online 編集部)

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