「美味しいから食べられている」

カルビーはフルグラを大きくすることにしたのである。2011年を起点として、当時は250億円の規模であったシリアル市場にとどまらず、17兆円とも推定される朝食の市場に打ってでた訳だ。

網干氏は「フルグラはシリアルの分野で30億円の売り上げがあり、社内でも売れていない商品とは見られていませんでした」とする一方で、「世の中を見ると、朝の時間を充実させる朝活の動きがありました。私たちは朝食に目を向け始めました。またまだできることがあるのではないか。それで市場を捉え直したのです」と振り返る。

そして朝の食卓に上げてもらうための工夫を行なった。朝ご飯を作る主婦を想定して、ヨーグルトやパンケーキ、トーストと一緒に食べるアレンジメニューを提案。フルグラと相性の良い食品を紹介しながら、あえて脇役に徹することで味を知ってもらい、食卓への登場回数を増やす試みを続けた。

従来、シリアルは栄養や健康のために食べるものというイメージだが、「フルグラは美味しいから食べ続けていただきたい商品」と網干氏。「朝ご飯は、1日3食で唯一、固定メニューの食事にする方が多いと思います。たとえ栄養価が高くても、美味しくないと毎日は食べられません」という。そして「(売れている)一番の理由は『美味しさ』。それを追求してきたことで、大きな存在のお米やパンと同列に並ぶことができたのではないでしょうか」と分析する。


セブン限定でカップタイプも登場 11月には浅草に朝食茶屋を開設へ

もう一つ、フルグラが朝の食卓に受け入れられたのは調理の「時短」がある。日本の共働き世帯は2014年に1077万世帯。忙しい朝の時間配分と、朝食メニューの栄養バランスを考慮するとき、そこにフルグラがあるという構図だ。

「簡便性」にも注目だ。2015年にはカップタイプが登場(セブン‐イレブン限定)。食器を使わずにヨーグルトや牛乳を加えることができる。売れ行きは順調に推移しているという。

フルグラ人気を支える味も進化を続けている。2015年8月には「黒豆きなこ味」が登場した。カルビーは期間限定の“現代版茶屋“として東京・浅草に「朝食茶屋」を開く(2015年11月6日〜24日)。黒豆きなこ味のフルグラに豆乳ヨーグルトをかけて、胡麻と昆布をのせるという和食メニューを提案する。

網干氏も「フルグラはアメリカ生まれで西洋の食品だと考えていたところがありましたが、黒豆きなこ味の登場により和風の可能性が広がりました。グラノーラは実は雑穀。豆乳と相性が良かったり、お豆腐と一緒に食べて美味しかったり。フルグラは従来のグラノーラを超える可能性があると思います」と力を込める。