80年代のNTTバブルの教訓に学ぶ

「売るべし、買うべし、休むべし」という格言は、相場で勝つためにはいったん持ち高を処分し、平常心を取り戻すことが最終的に勝つ秘訣であるということを教えている。

1980年代の終盤から90年代初頭にかけて発生したバブル相場が終わると、高値づかみをし、含み損となった株や投資信託を持つ個人投資家が大量に出現した。「売ってしまえば損失が確定してしまうが、持ち続けていれば、そのうち上がるかもしれない」と考えて持ち続け、そのまま塩漬けとなるケースが相次いだ。

87年に上場したNTT株は、バブル相場を象徴する銘柄である。旧電電公社が民営化して発足したNTTは、当初から知名度が高かった。政府保有株は抽選により1株119万7000円で売り出された。87年2月に上場すると160万円で初値が付き、同年4月には318万円まで上昇した。

第一次売り出しで1株を購入した投資家は、上場後すぐに40万円近くの値上がり益を得た。3月には2倍以上の300万円前後まで株価が上昇した。政府保有株の売り出しで当たった人や、上場後すぐに株式市場でNTT株を買った人の「濡れ手で粟」話が流布し、人気が過熱した。

しかし、株価は需要と供給で決まるもの。買いたい投資家が一巡し、政府が追加売り出しを行うと、市場では人気が低下した。そして、上場から2年後には初値を割り込む水準へと下落するのである。NTTの将来性を信じ、長期保有目的で買った投資家は、期待を裏切られる結果となった。当時の株主が「休むも相場」と考え、見切り売りできる投資家ばかりであったら、含み損を抱えて困った人の話が広く流布することはなかっただろう。投資家は必ずどこかで、自分が何をしてきたか、客観的な視点で振り返る時間を持つことが不可欠である。


売るべし、買うべし、休むべし

さて、この秋は日本郵政、ゆうちょ銀行、かんぽ生命の郵政3社が上場する。大型株の上場では、証券会社が投資家の関心を高める情報を出し、上場前に株を割り当て買ってもらう。中には、証券会社の営業担当者に頼まれて株を買う個人投資家も出てくるかもしれない。

また、一般的に新規上場は上場前に証券会社から株を取得し、上場初日に売れば儲けが出ると信じている投資家が少なくない。このため、上場日前は投資家の資金が市場から吸い上げられ、相場がいったん勢いをなくすというケースが少なくなかった。

経済環境は全く異なるが、NTT株も郵政関連株も、知名度が高い大型株の上場という点で共通している。「売るべし、買うべし、休むべし」という格言を念頭に置き、過去のNTT株をめぐる狂騒に思いを巡らしながら、投資家一人ひとりが、とるべき選択肢をよく考えた上で行動したい。(ZUU online 編集部)

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