サトウ食品のマーケティング戦略転換の成功
そもそも「パックご飯」は、それまであったレトルトの米飯が品質が悪いことからサトウ食品工業 <2923> が1988年に新たに開発した、比較的新しい商品ジャンルだ。
同社は、自社の餅の無菌包装技術を応用したところ、現在のような炊き立ての味を保った長期保存が可能な無菌のパックご飯を作ることができたのだった。
当初は炊飯器を持たない若者の一人暮らし世帯をターゲットとしていた。TVコマーシャルも「玄関開けたら2分でご飯」というキャッチコピーで放映、一定の成功を収めた。
しかし同業他社がすぐに追随したことや、一人暮らしの若者をターゲットとするインスタント食品やおかずなど競合品が多いこともあって、販売は伸び悩んでいた。
同社が目をつけたのは、単身高齢者や高齢者夫婦2人暮らしの世帯が多い関西のある地域での売れ行きだった。その地域にあるスーパーマーケットで、パックご飯の販売が好調であったという。
そこで同社は基本戦略を転換。商品コンセプトを「ブランド米の本格的な炊き立てのおいしさが味わえる簡便な個食」とし、メーンのターゲットを、味にうるさい高齢者に変えた。
さらに販売チャネルも食品スーパーに変更。その後の快進撃のきっかけが得られたのである。
東日本大震災でも「おいしい」備蓄食としての評価が高まり、日常的な常備食としてますます普及に加速がかかったのだ。
テーブルマークが新ブランド さらに広がる世界
パックご飯の魅力である「炊き立てのうまさ」「簡便さ」「保管のしやすさ」は既に浸透した。そして今、また新たな商品コンセプトの「ご飯」が発売されて、ターゲットがさらに拡大しはじめている。
テーブルマークが2015年9月に発売した、女性だけの開発チームによる働く女性をターゲットとした「おいしく健康」をテーマにした「美食生活」ブランドのご飯だ。
コシヒカリとユメピリカのブランド米に、レタス2個分の食物繊維を付加した健康維持食品。商品化はすべて女性目線で開発され、従来のパックご飯では捕えらえない新たなターゲットを取り込んで進化させる予定という。
パックご飯市場は、生産の技術革新によって今後さらに多様な健康機能が付加されるだろう。低価格化、賞味期間の延長もますます進み、世界的な日本食人気も相まって売れ行きも伸びるだろう。パックご飯は、今後も商品コンセプトやターゲットのさらなる変化、拡大が期待される、実に身近でとても特異な商品の1つなのだ。 (ZUU online 編集部)