3 素材、エネルギー関連セクターが動き出すと景気のピークが近い

素材セクターやエネルギー関連セクターが動き出すと景気のピークが近いと言えます。セクターローテーションの考え方を景気循環を見極める指標とするのであれば、これは一つの判断材料になるでしょう。

素材セクターのうち、特に鉄鋼分野は内需産業としての捉え方が強く、その製品は鉄筋や鉄骨などの建築資材や公共事業に用いられます。景気が良くなると家を建てる人が増えたり、建物の建設が増えるためにこうした素材関連セクターの株価が動くという見方ができます。国内の素材セクターは新日鉄住金やJFE、神戸製鋼、住友金属鉱山などが挙げられます。

4 後退局面で強さを発揮するセクター

景気は後退していても買われやすいセクターというのがあります。景気が落ち込み始めると、消費者は将来を悲観的に考え、家計を守ろうと財布のひもを固く閉じます。同じく投資家も景気後退懸念が広がると、マーケットの先行きを悲観し資産を引き上げるので株価も下がります。

しかしそんななかでも強さを発揮する銘柄群があります。それは食品や小売りセクター、それに医療、製薬関係セクターに属する銘柄です。どんな人でも好景気不景気に関係なく、食べなければ生きていく事ができませんし、毎日歯を磨きお風呂にも入ります。風邪を引いたり病気になればそれを治そうとします。つまり、生きていくのに必要な生活必需品に関連する企業の業績は景気の状態に影響を受けにくいのです。これらはディフェンシブ株と言われ、金融セクターや工業、機械セクターなどの為替や世界情勢で大きく株価が変動する景気敏感株とは逆の性質を持っています。また、薬品セクターの武田薬品、エーザイ、小売りセクターのローソン、大戸屋HDなどの配当利回りは3%台と全上場企業の上位10%以内に入る高水準となっています。景気後退局面で強さを発揮するセクターは値上がり益以外の部分でも強みを持っていると言えるでしょう。

セクター内での各企業のポジション

セクターローテーションで利益を出すには、景気を先読みをしてそのセクターの銘柄を買う事が重要になります。そして同じセクター内でも業務内容や業績、置かれているポジションはもちろん違います。たとえば、同じ小売りセクターでもファミリーマートとファーストリテイリング、吉野家は事業分野は同じではありません。また、同じ自動車産業でもトヨタは世界中で強い存在感を示していますが、ダイハツの軽自動車は北米やヨーロッパでの認知度は高くはないでしょう。同様に異次元の金融緩和策が打ち出され、為替が大きく円安方向に動いた2013年前半、やはりマーケットではダイハツよりもトヨタの方に物色の矛先が向かい、自民党に政権交代をする前の2013年1月から日経平均株価が一旦ピーク付けた5月23日までの株価の上昇率はトヨタが160%でダイハツの126%を大きく上回りました。

この事実からもわかるように、そのセクターであればどれに投資しても良いというのではなく、各企業の背景までもしっかりとリサーチする必要があります。ポイントとしてはその分野でのトップ企業から3番手くらいまではチェックしておきたいところです。自動車ならトヨタ、日産、ホンダ。鉄鋼は新日鉄住金、JFE、神戸製鋼。銀行であればメガバンク3行となります。いずれにしてもマーケットで負けないためには景気循環やセクター、事業分野や収益構造、そして配当率など様々なリサーチが必要となりそうです。

BY D.T

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