市場は利上げを織り込んだか?
しかしFRBにとって、9年ぶりの利上げに踏み切るインセンティブはこのような経済要因よりも、7年間続いた異例の量的緩和からできる限り早い時期に金融政策を正常化することにあるのではなかろうか。もちろん、利上げで景気が腰折れすれば元も子もない。その観点から景気動向を注視していると解釈できるわけだ。
では実際に利上げされると、市場はどう反応するだろう。株式市場ではS&P 500指数が10月末のFOMC声明直後に前日比1.5%上昇、4日のイエレン氏の証言を受けて0.4%下落、先週末の雇用統計発表後もごくわずかな下落にとどまった。
つまり、株価へのマイナス要因である利上げの可能性が高まるなかで大きく下げることもなく、これをかなり織り込んだとみてよいだろう。
利上げ決定直後に下げる局面があったとしても、今後の利上げペースが過去と比べかなり穏やかになるとのFRBのお墨付きがある。利上げは景気堅調の裏返し。クリスマス商戦などで米国経済の底堅さが確認されれば上昇基調を維持できるだろう。
他方、為替相場は一時的に円安方向に触れたとしても、その幅は限られるとみる。こちらも円ドルレートが10月末の一時120円/ドル割れから先週末は123円強までドル高に振れている。
さらに、昨年10月の日銀によるサプライズ緩和の「円安」効果が昨年末までに出尽くしたとすれば、今年年初から直近までの「ドル高」は米国の利上げを織り込んだものと解釈できる。むしろ材料出尽くしで円高に振れるリスクを警戒する必要があり、117円前後までの円高を予想するアナリストもいる。
米利上げ後は、ECBの金融緩和との神経戦
現時点では12月利上げに向けた下地は整いつつある。これまで世界経済による米景気下押しを懸念していたブレイナードFRB理事も、最近では「米経済見通しをめぐり一部で勇気づけられる兆しも出ている。労働市場の改善は非常に安定した」と、利上げを容認するような論調に転じている。
12月利上げとなれば、FRBの市場との対話姿勢に苛立ちを隠せなかった市場関係者や、利上げ観測が振れる度に国内市場が翻弄されてきた新興国の中央銀行に、ようやく平穏が訪れることになるだろう。わが国の日銀も例外でない。日米金利差が広がれば追加緩和という数少ない切り札をしばらく温存する余裕ができるからだ。
とはいえ、同じく緩和方向にある欧州中央銀行(ECB)との「神経戦」はこれからが本番だ。 (ZUU online 編集部)
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