原油価格,ガソリン価格
(写真=PIXTA)

資源エネルギー庁が11日に発表した全国のレギュラーガソリンの平均価格は、約5年ぶりの安値をつけた。全国平均の小売価格は1リットル当たり132.2円で、昨年7月の最高値169.9円から2割以上も安く、今年年初からみても約1割下落している。

クルマを運転しない人は、自分には関係ないと思うかも知れないが、実はこのような身近な出来事から政治、経済、国際情勢の流れを知ることができることが少なからずある。以下では、なぜガソリン価格が下がっているのか、それが日本経済にどう影響するのか、などを見ていくことにしよう。

ガソリン価格がここまで下落しているのはその原料である原油の世界価格が急落しているからだ。ご存じのとおり、日本は原油のほぼ全量を輸入に頼っているため、海外の価格変動が国内価格に大きな影響をおよぼす市場構造になっている。

米国産原油の代表指標であるWTI先物価格は昨年6月を境に急落、当時の1バレル当たり106ドルから今年年初には44ドルを割り込んで半値以下になり、その後若干持ち直す局面はあったものの現在はまた安値水準で低迷している。


原油価格急落は供給サイドが主因

なぜ原油価格はこれほどまでに急落したのか。その理由のひとつは世界的な景気減速による需要鈍化だ。欧州の低迷に加え、中国をはじめとする新興国も減速懸念が強まっている。つい最近も経済協力開発機構(OECD)が今年と来年の世界経済の成長予想を下方修正するなど需要の先行きはしばらく楽観できそうもない。

ただ、いくら景気が鈍化したからとはいえ需要が何割も落ち込むわけもない。原油急落の最大の要因は需要鈍化とは別にある。米国で2010年頃から本格化したシェール革命が世界のエネルギー地図を完全に塗り替えてしまったのだ。

シェール・オイルは、頁岩(けつがん)と呼ばれる地層に浸み込んでいる原油で、技術革新によって安価に取り出せるようになった。その生産量は10年足らずで10倍以上に増え、純輸入国だった米国がいまや世界一の産油国に躍り出たのである。

中東12カ国で構成する石油輸出国機構(OPEC)以外の生産量は14年に前年比で日量180万バレルも増加、このうち80%の140万バレルがシェール・オイルの増産によるものとみられ、その生産量は、OPEC全体の15%に相当するまで膨らんでいる。

まさにこの「革命」により供給が需要の伸びを大きく上回り、原油はだぶつき、価格が下がったが、これに拍車をかけたのが産油国のカルテルの崩壊だ。昨年11月に行われたOPEC総会は盟主サウジアラビアの主導で減産を見送り、これまで果たしてきた世界の需給調整機能を放棄したのである。