日本経済へのプラスとマイナス

このような需要減退と供給急増が同時に起きたことが原油価格急落の背景だが、日本などの非産油国にとってこれはありがたい話だ。原油はガソリンだけでなくあらゆる化学製品の原料であり、全国津々浦々の流通や工場、発電の燃料に使われる。野菜や魚介類など生鮮食品もビニールハウスや漁船の燃料として主に重油を使っており、原油安はこれら多くの業種を潤すことになる。

原材料安で企業業績がよくなる一方、販売価格の下落が消費を刺激すれば日本経済にプラスに働く。まさに安倍政権が切望する、賃上げ、消費増、企業業績向上、設備投資拡大というポジティブ・スパイラルの実現可能性が高まるわけだ。

こうみると良いことずくめのようだが、世界に目を向ければマイナスのリスクもある。産油国の経済が悪化すれば他の新興国にも影響がおよび、回り回って先進国にマイナス影響が波及する恐れもあるからだ。これにより世界同時株安が再発することにでもなれば日本も喜んでばかりはいられない。

一方で、日本の政府、日銀にとって原油安は痛しかゆしだ。景気にプラスに働く一方、原油を中心に輸入物価が下がればインフレ圧力が低下し、アベノミクス最大の狙いのひとつであるデフレ脱却に逆風となる。日銀は10月末にインフレターゲットの達成時期を先送りしたが、原油安が続けばスパイラルの根幹である賃上げが遠のく要因にもなりうる。


身近な出来事が大きなヒントにも

原油価格が半分以下になったのにガソリン価格はなぜそれほど下がらないのか逆に疑問を抱いた人もいるかもしれない。これは、ガソリン価格の約半分を税金が占め、残り半分の本体価格は円安が押し上げているためだ。ガソリンスタンドに表示されているガソリン価格をこのような素朴な疑問を持ちながら見てみるのもビジネスマンにとって良い頭の体操になるだろう。

いまだ根本的な解決を見ない「店頭からバターが消える」現象からは日本のお粗末な酪農行政が透けて見える。今後も、消費税再増税に向けた軽減策や、TPP(環太平洋戦略的経済連携協定)発効に備えた農林水産業への政府支援策などがニュースを賑わすことになるだろう。

なかにはその場しのぎの施策もあるかもしれない。このような身近な報道や出来事から日本、ひいては世界の政治・経済に思いを馳せてみるのも面白いだろう。(ZUU online 編集部)

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