新宿高島屋
(写真=PIXTA)

11月も中旬を迎え、歳末商戦本番を目前に控えた都市部の百貨店は、外国人観光客の増加で例年以上ににぎやかなようだ。インバウンド効果で多くの百貨店で好業績の中間期決算発表が続いているものの、一方で国内向け消費に目を向けると、百貨店業界は決して安閑としていられる状況ではない。

百貨店お得意の歳末商戦など社会行事は、ショッピングセンターや都市部の商業施設、ネット通販などが勢力を強めている。そんな中で百貨店が新たに取り組んでいるのが、コラボレーションによるチャレンジだ。


京阪百貨店は相愛大学栄養学部とコラボしたおせち

百貨店では「歳暮」「クリスマス」と並んで歳末の3大商戦のひとつに数えられる「おせち料理」商戦。高級料亭や有名レストランやホテルなどを中心とした品揃えで百貨店の強みが最も活かせる商戦だ。しかし近年は量販店やネット通販、コンビニなども参入し競争が熾烈になっている。

そんな中で大阪府に本社を置く京阪百貨店は、この冬、大学とのコラボレーションで開発したおせち料理を新たに取い扱っている。

同社の食品担当者が相愛大学(大阪市)の発達栄養学科の学生と共に、「子供から高齢者まで家族3世代に、からだに優しいおせち料理を楽しんでもらおう」と素材選びや献立を企画。惣菜メーカーの協力を得て商品化したもの。36品目が入った本格的な3段重には、伝統的な品目に加えて洋風や中華風のものまでいろどり豊かに盛り込まれている。管理栄養士を目指そうとする学生達の意見が取り入れられており、栄養バランスにも配慮されている。


新宿高島屋の「大学は美味しい!!フェア」は今年8回目

集客の要である食品催事でも注目すべき取り組みがある。

毎年5月頃に新宿高島屋が開催している「大学は美味しい!!フェア」だ。この催しは、当初は雑誌の連載企画とタイアップする形で始まった。今年で8回目を迎えており、決して新たな動きとは言えないが、百貨店と大学のコラボという現在の産学連携のトレンドにつながった、重要な取り組みと評価できるだろう。

現在はNPO法人「プロジェクト88」と提携し、今や全国各地から30を超える大学が参加する“食の学園祭”として人気を集める名物催事になっている。

全国各地の大学が地元農家や漁業、食品加工メーカー等と共に研究を重ねて開発した「大学ブランド商品」を販売する催しだが、参加する大学数や取扱い品目の増加に加え、味・品質、商品開発の技術、パッケージデザインなどに従来の商品にない斬新さとレベルの高さが評判になっている。

また各大学はその地の名産品や伝統的な製法などにアレンジを加えるなど、地域の特色も活かしていることから地域産業の活性化にも大きな役割を果たすことが期待できるのも大きな特長だ。