課題は非正規労働者への取り組み

労組の存在は、経営者に比べ弱い立場に立たされやすい労働者の地位を高め、経営者と労働者のコミュニケーションを促す役割を果たしてきたことは間違いない。

しかし、非正規労働者が急増しているという今日的課題に対しての取り組みが遅れてきた。

その根本的な原因は、日本の企業別組合が正社員のみで組織されてきたという歴史的経緯にある。つまり、非正規労働者を防波堤にすることによって正社員が守られるという側面があるのである。

例えば、企業が経営不振に陥ったときに、まず非正規労働者を解雇の対象者とすることによって、正社員の雇用が守られやすくなることになる。

このため、非正規労働者からは、正社員のみで組織される労働組合は既得権者の守護者であり、かえって非正規労働者の地位向上を妨害しているなどと批判されることさえある。正社員と非正規労働者との対立構造の中では、労働組合が必ずしも全労働者を代表しているとは言えない、非正規労働者を犠牲にして正社員を守ろうとしている存在にすぎないと言われるようになってきたのだ。

そのような中、最近は、非正規労働者などを対象として企業横断的に個人単位で加入できる労働組合(以下「ユニオン」という。)が、積極的な活動を行うようになってきており、注目を浴びている。非正規労働者と正規社員との間に不合理な労働条件を設けてはならないとする改正労働契約法が2013年4月に施行されたが、同法に基づき待遇格差の是正を求める訴訟の提起・追行を主導しているのもユニオンだ。

経営者側としても、良好な労使関係を維持・構築するためには、企業別労働組合との関係に気を揉むではなく、ユニオンとの関係にも気を揉なければならなくなりつつある。


設置は義務ではない 成長企業で結成の動きが広まるか?

労組は必ず作らなければならないというものではない。ただ、労働者が労働組合を結成しようとしていることに経営者側が支配したり介入したりすると不当労働行為となり、労働委員会による救済命令などの対象となる。

新興企業などの成長企業では、当該企業の設立・成長の経緯もあって、労働組合が組織されていないケースが多い。カリスマ創業者の理念に共感して入社した労働者が多かったり、そもそもそれ相応の賃金と労働条件が既に与えられていたりするからだ。

加えて、そのような成長企業に対しては特に株主・投資家の立場からも、労働組合が存在しないほうがポジティブと捉えられている傾向もある。企業経営が悪化した際に労働組合が存在していると、迅速かつ効果的な「リストラ策を実施することが難しくなってしまうという見方からだ。

もっとも、成長企業であるからといって労使関係が必ず良好というわけではないはずだ。むしろ成長企業であればあるほど会社組織の急成長に人員採用が追いついておらず、労働環境が劣っている可能性が高い。例えば、ブラック企業として問題視される企業は、老舗企業よりも成長企業のほうが多い印象がある。そのような急成長企業であればあるほど、労働組合を結成することは、経営者に対する労働者の交渉力を高める手段として有効な方策となると思われる。

冒頭の通りアマゾンジャパンにおいて労働組合が結成されたとのことであるが、今後、新興成長企業において労働組合結成の動きが広がるかは、注目に値する。(ZUU online 編集部)

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