各国の労働市場の現状を評価した「グローバル・スキル・インデックス」の2015年版が発表され、日本は人材のミスマッチが最も評価の低い10となったことが分かった。2年連続で悪化しており、アジア・太平洋地域では最も「人材が探しにくい国」という結果となった。
このレポートは、世界31カ国を対象に、様々な観点から分析を行い、経済危機が世界の労働市場に与える影響を紹介している。労働市場の均衡が最適な状態を5.0、0に近づくほど人材の確保が容易で、10に近づくほど困難であることになる。
「グローバル・スキル・インデックス」は、英人材サービス会社ヘイズが、専門スキルを持つ人材の需給状況を世界31カ国で調査し、統計的にまとめたレポートだ。各国の労働市場の現状を7項目の指標に基づいて評価しており、数値が高い国ほど人材獲得が難しく、逆に数値が低いほど優れた人材を確保しやすいことを示している。。
7つの指標 数値が低いほど高評価
7つの指標は「教育の柔軟性」「労働市場への参加」「労働市場の柔軟性」「人材のミスマッチ」「全体的な陳儀夏力」「専門性の高い業界における賃金圧力」「専門性の高い職種における賃金圧力」となっている。
たとえば「労働市場の柔軟性」とは、労働市場が活発に機能するかどうかは国の行政手腕によるところが大きい。例えば、形式的な手続きを廃止する、雇用を妨げる法律を改める、海外から優れた人材を招きやすくするなどが考えられる。この項目の数値が低い国ほど、雇用を促進する法整備が進み、労働市場を規制するバリアが少ないことを示している。
「賃金圧力」については詳しく3つの指標(全体的なもの、業界特化、職種特化)が用いられている。賃金上昇が物価の伸びを上回るスピードで進むと、専門スキルを持つ人材の不足が大きな問題となる。この項目の数値が低い国ほど、急激な賃金上昇がなく、労働市場への圧力が少ないという訳だ。
また「専門性の高い業界における賃金圧力」が何かといえば、高度な専門スキルが求められる業界では、トレーニングに多くの時間を要するため、人材を短期間で確保することが難しい。この項目の数値が高くなるほど、専門性の高い業界での賃金上昇のスピードが早く、エンジニアリングやテクノロジーなどの分野で熟練した働き手を確保するのが困難ということになる。
そして「専門性の高い職種における賃金圧力」を採用している理由は、平均以上の職業訓練、教育、経験を要する専門性の高い職種は、賃金圧力が高まるとスキルを持った人材の確保が難しくなる。この項目の数値が高くなるほど、専門性の高い職種におけるスキル不足が深刻であり、逆に低いほど高スキルの人材確保に要する賃金上昇のスピードが緩やかであることを示す。
では日本や労働力の確保で競合する中国・シンガポールに対する評価の概要を見てみたい。
日本 人材のミスマッチが何よりの課題
人材のミスマッチは日本が抱える大きな課題のひとつで、評価数値は昨年の9.5からさらに悪化して最高値の10となった。企業が求めるスキルと求職者の持つスキルに大きな隔たりがあるために、労働市場が円滑に動かず、賃金上昇を招くなどの深刻な影響を与えている。
この人材ミスマッチの問題が大きな障害となって日本全体の勢いを減速させる懸念はあるものの、労働市場改革に向けた取り組みや、就労率がやや上向いてきたことなど、明るい展望も見える。
シンガポール 「全体的な賃金圧力」の悪化
様々な多国籍企業のアジア拠点であるシンガポールでは、非常に多くの建築事業およびインフラ建設プロジェクトが進行中で、求人マーケットは活況が続いている。しかし、テクニカル関連分野の高スキル需要に人材供給が全く追いついていないのが実情だ。
政府主導で、中程度の賃金労働に地元シンガポール人を雇用することが奨励されているため、国内で高スキルを持つ働き手を見つけることが難しくなっている。企業が高スキル人材獲得競争の中で受ける賃金圧力は増しており、今回の調査でも、「全体的な賃金圧力」の数値が昨年の1.3から5.8に跳ね上がった。企業が人材採用目標を達成するためには、革新的で魅力ある戦略を様々な形で打ち出していく必要があるだろう。
中国 労働力不足は緩和の傾向
経済成長率の鈍化が続く中国だが、経済活動の減速に伴って中国の労働力不足は緩和されつつある。能力の高い人材を求める雇用主にとっては歓迎すべき状況だ。一方、とくに専門スキルを必要としない業種での「全体的な賃金圧力」は依然として高い。
世界に冠たる低コスト労働市場としての中国のイメージが近年大きく崩れてきていることも影響している。競争力を保ち続けるために各企業経営陣は、生産性を上げる、高コストの外国人従業員への依存を減らす、バリューチェーンを高めるなどの対策に注力している。
雇用者側から見ると、特に中間および上級管理職の高スキル人材の不足が続いており、有能な人材を惹きつけ、育て、定着させることが各企業のCEOおよび人材開発部門の最重要課題となっている。(ZUU online 編集部)
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