2013年7月AML/CFT法の完全施行により厳格化の方向に

日本から遅れること数年、2013年7月にアンチマネーロンダリング(AML)および反テロリスト資金供給(CFT)に関する法律が完全施行されたNZでは、今後口座開設における本人確認及び資金使途の確認がますます厳格化される傾向にあるといえるでしょう。今回リテールバンキングを行っている4行に話を聞きましたが、対応がまちまちで正に過渡期といったところです。

どんなサービスが受けられますか?- NZの銀行サービス編

さて、実際に口座開設が完了した後、投資家がアクセスできる金融サービスですが、ATMとEFTPOS(デビット機能)が利用できるキャッシュカード、インターネットバンキング、定期預金、各種ファンドから融資まで、日本と遜色ないサービスを受けることが可能です(一部信用査定が必要なサービスもあります)。

参考までに現在(2013年9月時点)各銀行の期間1年定期預金(Term Deposit)の利率は3.00%~4.10%、最低預入金額はNZ$2,000~NZ$10,000からとなっています。

グローバルな銀行の盲点

世界中に同じ看板を出しグローバル展開を行っている銀行も、各国の法律に基づいて設立された別個の銀行であるという点には注意が必要です。例えばANZニュージーランドとANZオーストラリアは共に「ANZグループ」ですが、ニュージーランドで開設した口座はニュージーランド国内でしか使用できません。HSBC・Citibankなども同様です。尚シティバンクNZでは現在ホールセール向けのサービスのみを取り扱っています。

ペイオフについて

最後にニュージーランド版ペイオフ、Government Guarantee Scheme(政府保証スキーム)について一言付け加えさせていただきます。

世界的な金融危機が起こった際NZでは時限措置として「個人預金に対する政府保証」が行われました。しかしながらこちらは2011年12月末で終了しており、現在ニュージーランドに日本のような所謂ペイオフ制度はありません。代わりにOBR: Open Bank ResolutionというOECD諸国の中でも異色の政策が取られており、破綻等の非常事に当該銀行を政府の定める法定管財人(statutory management)の下に置くことで翌日には全部または一部の銀行サービスが行えるようにし、短期的な混乱を防ぐ目的があります。

このようにOBRは長期的な破綻処理について定めたものではないため最終的な破綻処理の過程で預金者や株主がどの程度保護されるかについての明確な規定はありません。

参考文献

Reserve Bank of NZ ( http://www.rbnz.govt.nz )
Canstar Blue NZ ( http://www.canstarblue.co.nz )
ニッキン( http://www.nikkin.co.jp )
The New Zealand Treasury ( http://www.treasury.govt.nz )

BY MW : ニュージーランドにある投資銀行のプライベートバンキング部門勤務

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