労基法違反だけでなく刑法違反(強要罪)となることも

さらに、労働基準法違反の刑罰に科せられる可能性があることに加え、刑法上の刑罰も科せられる可能性がある。

刑法223条1項は、「生命、身体、自由、名誉若しくは財産に対し害を加える旨を告知して脅迫し、又は暴行を用いて、人に義務のないことを行わせ、又は権利の行使を妨害した者は、3年以下の懲役に処する」と規定している(強要罪)。

既に述べたとおり、自社製品の購入を強制する取り決めは労働基準法違反で無効である。それにもかかわらず、給与から差し引くなどのプレッシャーを与えて、本来社員には義務のない自社製品購入を強制することは、強要罪にも該当する可能性がある。


協力要請と奨励を求めるのが限度

以上から分かる通り、企業は社員に対し自社製品購入を強制することはできず、せいぜい協力要請と奨励を求めることができるにすぎない。

冒頭のシャープの例でも、あくまでも協力要請と奨励であり、購入しないことによるペナルティもなく決して強要ではないと強調されている。

しかし、セール専用のサイトから申し込む仕組みで、社員には購入額の2%分を奨励金として支払い、購入状況を会社側が把握できるということであり、かなりグレーである印象はぬぐえない。

例えば、人事評価において不利益な評価を受けた社員が裁判を提起して、人事評価が低かった理由は自社製品購入運動に参加しなかった点にあるという因果関係を証明することができれば、会社側は人事評定のやり直しを迫られたり、損害賠償義務を負ったりすることとなろう。


社員としての注意点と上司として要請する際の注意点

あなたが自社製品購入を呼び掛けられる側の社員であるならば、購入したくないのであれば、自社製品購入運動はあくまでも協力要請と奨励にすぎないとして、きっぱりと断ればよい。

もちろん愛社精神を発揮して自社製品を購入しても全く構わない。そして、もし自社製品購入運動に参加しなかったことを理由に何らかの不利益を受けていると感じるのであれば、それを後日、第三者に対し説得力をもって主張・証明することができるよう、その証拠を収集・保存しておくべきだ。

逆にあなたが上司の立場であるならば、自社製品購入運動はあくまでも協力要請と奨励にすぎないことを明言した上で、愛社精神に訴えて協力するよう要請するしかない。間違っても、部下の人事評価にあたって、自社製品購入運動に参加しなかったことを理由に低くする人事評価記録を残してはならない。仮に本当の理由がそうだとしても。(ZUU online編集部)

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