各家庭へのマイナンバー制度の通知が始まり、はや一カ月が経過した。制度が実際に運用開始されるのは来年の1月からだ。

「マイナンバーの開始で副業がバレやすい」といったことを耳にした方もいるのではないだろうか。それを聞いて、会社にナイショでこっそり副業をやっているサラリーマンの中には、「バレたらどうしよう」とヒヤヒヤしている方も少なくないことだろう。

そもそも、副業が会社に知られてしまうきっかけはどこにあるのだろうか。また、副業が今後導入されるマイナンバー制度とどのように関係するのかを以下でみていこう。

1.副業がバレる仕組みは「住民税の特別徴収額」にあり

本業先に副業がバレるのは、各自治体から勤務先の会社に対して送られる住民税の納税通知書がきっかけであることが多い。

住民税は、基本的に前年の1月1日から12月31日までの年間所得に対して課税されるものであり、普通徴収(納税者本人から徴収)または特別徴収(本人の勤務先において給与から源泉徴収)という形で課税される。

普通徴収ならば、本人に納税通知書が届き、特別徴収ならば勤務先に届くのが原則である。通知書が各個人または法人に送付されるのが「6月」以降のため、ここでバレる可能性が出てくる。納税通知書に記載されているのは次の事項である。

(1)賦課(課税)の根拠となった法律および条令の規定
(2)納税者の住所及び氏名
(3)課税標準額(=課税のベースとなった前年の年間所得額)
(4)税率
(5)税額
(6)納期
(7)各納期における納付額
(8)納付の場所
(9)納期限までに納税しなかった場合における措置
(10)賦課に不服がある場合の救済方法

そしてこの中で、会社が「この社員、もしかして副業をしているのでは?」と疑うのは、(3)の「納税標準額」だ。この標準額が、前年末の年末調整時の金額よりも高い場合には、副業の疑いが濃厚になる。

それでは、「低ければ問題ないのか」と言えばそうでもない。副業が週末起業の場合で、事業所得や不動産所得として青色申告している場合には、損益通算も可能である。そのため、医療費控除(確定申告をする場合のみ適用を受けられる)の可能性が低い場合には、疑いをかけられることもあるということだ。

2.副業収入の形態がバイトやパートの場合、バレる可能性は高い

以前から、「副業収入の形態がバイトやパートの場合、バレる可能性が高い」と言われてきた。なぜなら、いずれの雇用形態であっても、支払いを受ける収入についての所得税法上の名称は「給与所得」となり、年末調整の対象となるからである。

ここで、「年末調整の対象というだけでどうしてバレるの?」と疑問に感じる方もいるかもしれない。年末調整というと、「毎年12月にもらう給与明細の特別な欄に控除や還付などの数字が入っているだけ」というイメージがあるかもしれない。

しかし、実際の年末調整の処理は給与所得者だけに対して行われるだけではなく、行政機関に対しても行われる。税務署に対しては、一定額以上の給与所得者についての源泉徴収票と法定調書合計表、市区町村に対しては、すべての給与所得者の所得と年間所得税額に関する給与支払報告書(中身は年末調整後の源泉徴収票と同じ)が送付されているのだ。

この「すべての給与所得者」というのは正社員だけでなく、バイトやパートも含む。つまり、年末調整の時点で、副業収入も市区町村に筒抜けということなのだ。

なお、原則として、年末調整で取り扱った給与については、翌年6月以降の住民税の徴収方法は自動的に「特別徴収」が適用される。特別に希望を出せば普通徴収の手続きもできないことはないが、昨今、どの市区町村も税金のとりっぱぐれのない特別徴収を徹底するよう制度を厳格化している。普通徴収を選択するのは難しいと考えた方がよさそうだ。