経済見通し
中国経済の見通しは15年が前年比7.0%増、16年が同6.7%増、17年が同6.5%増と、緩やかな成長率の鈍化(ソフトランディング)を予想している。
需要項目別に見ると、最終消費は3ポイント台後半のプラス寄与、総資本形成は製造業・不動産業では鈍化傾向が続くものの、消費サービス関連・インフラ関連は堅調で3ポイント前後のプラス寄与、純輸出はゼロ近辺と想定している(図表-14、15)。
また、ソフトランディングの中にも山谷はありそうだ。15年10-12月期は住宅市場の底打ちで家具などの販売が回復、10月に開始された小型車減税の効果で自動車販売も回復してきていることから、一旦は7%成長を回復するだろう。
但し、製造業の過剰投資・過剰債務や地方政府債務の問題解決には数年を要すると考えられることから、その後の成長率は再び鈍化傾向と予想している(図表-16)。
〔下方リスクについて〕
下方リスクとしては住宅市場の変調が挙げられる。11月18日に公表された10月の70大中都市住宅販売価格変動状況を見ると、上昇した都市よりも下落した都市の方が多かった(図表-17)。
今春、住宅販売が回復して、上海や北京などの住宅価格が上昇に転じ、その流れが地方都市へと波及すれば、在庫が減り着工が増えて好循環になると期待された。しかし、今回の住宅関連統計を見ると、好循環が実現する可能性は低下したと言わざるを得ない。住宅市場の変調が再びリスク要因として浮上したといえるだろう。
(*1)中国政府は2015年5月19日に「中国製造2025」(国発[2015]28号)を発表し、"製造大国"から"製造強国"への転換を図る道筋を示した。なお、戦略的新興産業との対比については「"中国製造2025"と日本企業」(研究員の眼2015年4月13日)を参照。
(*2)新型都市化が生み出す投資需要は巨大で2020年までの累計で42兆元(約800兆円)に達すると試算されている(中国財政部)。スケジュールとしては2017年までが試行地域における先行実施期間となり、その成果を踏まえて2018-20年には全国展開される予定。
三尾幸吉郎
ニッセイ基礎研究所 経済研究部
【関連記事】
・
“中国製造2025"と日本企業
・
図表でみる中国経済(産業構造編)
・
中国経済はふたつの二極化が同時進行~日本企業への影響も二極化
・
最近の人民元と今後の展開(2015年11月号)
・
中期経済見通し(2015~2025年度)