運用戦略の成果は、総資産利益率(ROA)の上昇に表れる
◆市場全体のROAはボトムの2.0%から2.4%に改善
3つの運用戦略がいかにしてROAを高めて分配金の増加をもたらすのか、J-REITの財務データをもとに確認したい。
図表―5は、J-REIT全体の収益構造について、「経常利益(分配金原資)」=「NOI」-「支払利息」-「減価償却費」-「運用報酬等」の各項目を半期毎に集計し、それぞれ総資産(期初・期末平残)で割った数値(年率換算)を示している。
これによると、2015年上期のNOI利回り(対総資産)は年率4.9%であり、そこから費用項目の「支払利息」0.6%、「減価償却費」1.2%、「運用報酬等」0.7%を控除したROAは2.4%であった。
このうち、「減価償却費」と「運用報酬等」は、総資産額に連動する固定費の性質が強く、総資産に対する両項目の合計値は1.8%から1.9%で毎期の変動は小さい。したがってROAを高めるにはトップラインのNOIを増やす(NOI利回り上昇)、あるいは金融機関などへの支払利息を削減する(負債利子率低下)ことが求められる。
2015年上期のROAは2.4%であり、2011年下期2.0%から0.4%上昇した。このうち、NOI利回り上昇の効果は0.2%(4.7%→4.9%)、支払利息削減の効果は0.3%(0.9%→0.6%)であった。この間、運用不動産の利回り向上と負債利子率の低下がともに分配金増に寄与したことになる。