◆外部成長戦略は分配金増加にプラス寄与。課題は取得利回りの低下
J-REITによる物件取得額はリーマンショック後に低迷し、2009年には2,000億円台に落ち込んだ。その後、2012年にJ-REITの新規上場が再開し取得額は8,000億円まで回復し、不動産価格の上昇を先取りして積極姿勢に転じた2013年の取得額は2.3兆円と過去最高を記録した(図表―8)。
続く2014年の取得額は1.6兆円、2015年(1-9月)も1.3兆円と高水準で、直近5年間で取得した物件が現在の運用不動産の約50%を占める。また、取得利回りは2009年以降、既存ポートのNOI利回り(対総資産)を上回る水準を確保している。
過去最高の取得額となった2013年の取得利回りは平均5.5%で既存ポートに対して0.7%上回った。前回の不動産価格上昇期(06年~08年)は、既存ポート利回りを下回る水準で外部成長を行い、結果的に全体の利回りを押し下げてしまったが、利回り重視の外部成長戦略が既存物件の減収を補いポート全体の利回り向上に寄与している。
ただし、国内外の投資マネーが不動産売買市場に流入し不動産の取引利回りが低下するなか、これまでのように利回り上昇に資する外部成長は難しくなっている。
CBREの投資家調査(2015年10月)によると、東京オフィスの期待利回りは3.75%となり調査開始以来の最低値を更新した。オフィスビルより相対的に利回りの高い住宅や倉庫、ホテルも軒並み水準を下げている(図表―9)。実際、2015年の取得物件と既存ポートの利回りスプレッドは0.1%に縮小しており、外部成長ペースが今後鈍化する可能性も考えられる。