物価・金融政策・長期金利の動向
◆(物価)物価は上がり難い状況が持続
エネルギー価格の下落に伴い消費者物価の総合指数(前年同月比)が低迷しており、エネルギー・食料品を除いたコア指数との乖離が大きくなっている(図表22)。
当研究所では、16年以降に原油価格は緩やかに上昇に転じ、16年7-9月期には前年比でもプラスに転じると予想している。このため、消費者物価(前年比)は15年の+0.2%から16年は+1.6%、17年は+1.9%と、緩やかながら上昇すると予想している。
もっとも、12月のOPEC総会では産油国が減産合意に失敗したため、原油価格は足元40ドルを割り込むなど下落基調が強まっていることから、原油価格の反転時期が先送りされるリスクには注意したい。
◆(金融政策)12月に利上げ開始も、その後の利上げペースは緩やか
11月の雇用統計を受けてFRBは労働市場の回復に自信を深めており、12月15~16日のFOMCで06年6月以来となる政策金利の引上げが確実となった(図表23)。これで夏場以降高まった利上げ開始時期を巡る不透明感は払拭される。
一方、FRBはPCE価格指数(前年比)で2%の物価目標を設定しているが、総合指数が前年同月比+0.2%と0%近い水準に留まっているほか、コア指数も15年1月以降+1.3%が続いており、前回、前々回の利上げ開始時期に比べて低位となっている。今後も物価上昇は緩やかに留まることから物価目標の達成時期は見込み難い。
このため、政策金利引上げペースは緩やかに留まろう。当研究所では16年に75bps、17年が100bpsの利上げ幅を予想しており、前回(04年6月利上げ開始)やFOMC参加者予想より小幅になるとみている(図表24)。このような緩やかなペースであれば、利上げによる内外実体経済・資本市場に対する影響は限定的となろう。
◆(長期金利)緩やかな上昇を予想
長期金利(10年国債金利)は、15年6月に2.5%近辺まで上昇した後、原油価格の下落や米株式市場の下落に伴うリスク回避の動き等から8月下旬に一時2%を割れ、12月8日時点では2.2%近辺で推移している(図表25)。
長期金利は、16年以降も政策金利引上げに伴い、緩やかに上昇するとみられる。もっとも、物価上昇圧力が抑制されているほか、政策金利引上げペースも緩やかに留まるとみられ、金利水準は16年末が3%台半前半、17年末でも3%台後半に留まると予想している。
(*1)1Weeklyエコノミスト・レター(2015年9月9日)「米国経済の見通し-国内要因からは底堅い成長の持続を予想。懸念される海外経済動向と米資本市場への影響」http://www.nli-research.co.jp/report/econo_letter/2015/we150909us.html
(*2)生産年齢人口(16歳以上の人口)に対する労働力人口(就業者数と失業者数を合計したもの)の比率。
(*3)生産年齢人口に対する就業者数の比率。
(*4)2015年超党派予算法成立の経緯や内容については、Weeklyエコノミスト・レター(2015年11月20日)「2015年超党派予算法が成立-17年の新政権発足まで政府機関閉鎖、米国債デフォルトリスクは低下」http://www.nli-research.co.jp/report/econo_letter/2015/we151120us.htmlを参照下さい。
窪谷 浩(くぼたに ひろし)
ニッセイ基礎研究所 経済研究部
主任研究員
【関連記事】
・
米国経済の見通し-国内要因からは底堅い成長の持続を予想。
・
2015年超党派予算法が成立-17年の新政権発足まで政府機関閉鎖
・
中期経済見通し(2015~2025年度)
・
【11月米雇用統計】雇用者数は21.1万人増加。順調な労働市場の回復を確認。
・
【10月米個人所得・消費支出】消費は予想を下回る伸びに留まる