◆(住宅投資)住宅市場は利上げ開始後も回復の腰折れは回避
住宅市場は好調を維持しているものの、住宅着工・許可件数(3ヵ月移動平均、3ヵ月前比)は、15年春先からやや過熱気味となっていた反動で、足元のモメンタムは低下している(図表15)。
米国では利上げが開始されることもあり、住宅市場の回復ペースは鈍化するとみられる。もっとも、雇用不安が後退する中で、引上げペースも当面緩やかとみられることから、大幅な鈍化の可能性は低いと判断している。建設業者のセンチメントを示す住宅市場指数は05年以来の高さとなっているが、とくに今後6ヶ月の新築住宅販売見込みは高くなっており、楽観的な販売見通しが示されている(図表16)。
また、住宅価格や金利水準を加味して住宅取得に必要な所得が実際の所得をどの程度上回っているかを示す住宅取得能力指数は160台で推移しており、足元の所得水準が必要な最低レベルを6割超上回っていることを示している(図表17)。
さらに、住宅価格が今後1割上昇し、住宅ローン金利が1%ポイント上昇すると仮定して試算した同指数は130台と、1%の金利上昇後でも依然として最低レベルを3割上回るとみられる。このため、政策金利の引き上げ開始後も住宅市場が腰折れする可能性は低いと判断している。
◆(政府支出、財政収支)超党派予算法成立により米国債デフォルト、政府閉鎖リスクは低下
11月2日に16~17年度の予算枠や、17年3月まで債務上限を適用しないことを定めた2015年超党派予算法が成立した(*4)。下院議長選出に伴う混乱から下院共和党が機能停止状態に陥ったため、11月上旬に抵触する債務上限を引上げることが出来ず、米国債がデフォルトするリスクが高まっていた。
同予算法が成立したことで、17年3月までデフォルトリスクは回避された。さらに、暫定予算の期限が切れる12月11日までに各省庁へ予算配分を行うための歳出法案を成立させる必要があるものの、政府閉鎖リスクも低下した。このため、財政に係わる政治リスクは当面後退したと判断できる。
一方、同予算法は超党派で合意を得るため、16~17年度の裁量的支出について海外緊急事態作戦費(OCO)も含めると、共和党が求める国防関連支出拡大とオバマ大統領の民主党が求める非国防関連支出拡大を同時に満たす財政拡張的な内容となっている(図表18)。
もっとも、増加された歳出額(Outlayベース)は、裁量的支出と義務的支出を合わせても16年度が339億ドル、17年度が309億ドルといずれもGDP比0.2%程度に留まっており、政府支出に与える影響は大きくない(図表19)。当面、政府支出が米国経済に与える影響は中立的となろう。
◆(貿易)外需の成長率寄与はマイナスも、16年後半以降は持ち直しへ
純輸出の7-9月期成長率寄与度はマイナスとなったが、輸出の伸びが+0.9%(前期:+5.1%)と輸入+2.1%(前期:+3.0%)に比べて鈍化したことが大きい。10月も同様の理由から貿易赤字が拡大しており、輸出の冴えない状況が持続している(図表20)。
米金利先高観測を背景にドル高基調が持続する中、ISMの新規輸出受注指数は製造業が15年6月以降、受注の減少を示す50割れとなっていたが、ここにきて比較的底堅く推移していた非製造業も15年4月以来となる50割れに転じた(図表21)。
当面、ドル高や米景気の相対的な好調が持続するとみられることから、輸出の伸びは期待できず、純輸出がマイナス寄与となる状況は持続するとみられる。もっとも、日本や欧州景気の拡大やユーロの下げ止まりに伴い、16年後半以降は徐々にマイナス幅が縮小してくると予想している。