◆(経済見通し)成長率は16年+2.6%、17年+2.5%を予想
10-12月期の成長率(前期比年率)は+2.8%への加速を見込んでいる(図表1、5)。10-12月期は在庫投資の大幅なマイナス寄与が緩和されるほか、雇用者増加ペースの再加速から個人消費や住宅投資の底堅い伸びが期待できる。この結果、15年通年の成長率(前年比)は+2.5%と14年(+2.4%)から小幅な加速となろう。
さて、16年以降の経済見通しだが、17年にかけても個人消費主導の成長が持続すると予想している。労働市場は、回復ペースが鈍化するものの、予測期間を通じて回復基調が持続するとみている。
このため、個人消費は17年10-12月期に+2.5%まで鈍化するものの、今後も底堅い伸びが持続しよう。さらに、住宅市場についても政策金利の引き上げに伴い、回復ペースは鈍化するものの、利上げ幅が限定的とみられることから、腰折れの可能性は低いとみている。
一方、民間設備投資は、ドル高を背景に製造業を中心に設備投資の増加が見込み難いものの、15年の成長率を押下げてきた資源関連の建設投資については、原油価格の反転に伴い、マイナス寄与は緩やかに解消すると予想している。
外需は、ドル高や米国経済が相対的に好調な状況が暫く続くことから、16年前半はマイナス寄与が持続するものの、日本やユーロ圏の景気持ち直しや、ドル高の緩和に伴い年央以降はマイナス幅の縮小を予想している。
最後に政府支出は、基本的に景気に中立の状況が持続するとみられるが、17年以降は、来年の大統領選挙の結果によって大きく変わる可能性があるため、選挙結果が注目される。
物価は、当面上昇圧力が抑制された状況が持続しそうだ。当研究所では、これまで物価を押下げてきた原油価格は16年以降に緩やかな上昇基調に転じると予想しているが、17年末でも50ドル台半ばに留まるとみているため、原油価格上昇に伴う物価上昇圧力は限定的とみている。
一方、金融政策は12月に政策金利引き上げを開始した後、16年は3回(75bps)、17年は4回(100bps)の利上げを予想している。これは、前回の利上げ局面やFOMC参加者の予想を若干下回るペースである。物価が抑制される中で利上げペースは緩やかに留まろう。
このため、政策金利引き上げによる米経済や新興国など海外経済に与える影響も限定的と予想している。最後に長期金利は、政策金利が引き上げられることもあり、緩やかに上昇すると見込んでいる。もっとも、物価の上昇ペースは緩やかとなることから金利の上昇幅も限定となろう。
上記見通しに対するリスク要因としては、中国経済のハードランディングなど海外経済の減速が米経済に影響するリスクに加え、17年には米国で8年ぶりとなる政権交代が実現するため、新政権の政治リスクが挙げられる。
大統領候補者の政治信条・スタンスは民主党と共和党で大きく異なっている。OnTheIssues.orgは「個人の権利」から「防衛・外交」まで選挙の争点になりそうな20項目を挙げ、それぞれについて過去の発言や議員としての投票記録などから、各候補者の政治スタンスを評価している(図表6)。
これをみるとオバマケア、富裕層に対する課税、自由貿易、軍備拡大などの重要項目をはじめ民主党、共和党候補者のスタンスが大きく異なっていることが分かる。
民主党から大統領が選出される場合には、自由貿易を除いて基本的に現政権との政策スタンスに違いはないとみられるものの、共和党から選出される場合には政策が大幅に変更される可能性が高い。このため、16年の大統領選挙が混戦となる場合には新政権の政策に対する予見性が低下することから、企業や消費者の意思決定に影響する可能性には注意したい。