経済概況・見通し
◆(経済概況)7-9月期は成長率が低下したものの、個人消費主導の底堅い成長が持続
米国の7-9月期実質GDP成長率(以下、成長率)は前期比年率+2.1%に留まり、4-6月期の+3.9%から大幅に低下した。
需要項目別にみると、労働市場の回復を背景に個人消費は+3.0%(前期:+3.6%)と底堅い伸びが持続したほか、住宅投資も同様に+7.3%(前期:+9.3%)と高い伸びとなった。一方、民間設備投資が+2.4%(前期:+4.1%)となったほか、政府支出も+1.7%(前期:+2.6)に留まり、前期から伸びが鈍化した。
さらに、純輸出(輸出-輸入)の成長率寄与度が▲0.22%ポイント(前期:+0.18%ポイント)と前期からマイナスに転じたほか、在庫投資の成長率寄与度は▲0.59%ポイント(前期:+0.02%ポイン)と大幅なマイナス寄与となった。在庫投資と外需を除いた国内最終需要では+2.9%(前期:+3.7%)と前期からの低下幅は緩やかになっており、当期は在庫投資の落ち込みが成長率低下の主な要因となっている。
7-9月期は、中国経済の減速懸念が強まったこともあり、海外経済の減速等が米国の実体経済に与える影響が懸念されていた。
9月のレポート(*1)で指摘した通り、海外要因を嫌気して米国資本市場の不安定な状況が長期化する場合には実体経済に影響するとみていたが、当研究所の予想通り中国経済のハードランディングが回避されたほか、8月下旬に大幅下落した株式市場も安定を取り戻したことから、影響は限定的であった。
米国では労働市場の回復を背景に、個人消費主導の底堅い成長が持続していると評価できる。実際、労働市場と消費の状況を確認すると、労働市場では非農業部門雇用者数の伸びが8月から2ヵ月連続で大幅に鈍化し懸念されたが、10月以降再び加速した(図表2)。
この結果、年初来の月間平均増加数は21万人となり、99年以来の水準となった14年(26万人)からは低下しているものの、依然として20万人超の好調なペースが持続している。また、失業率についても11月は5.0%とFRBが目標とする4.9%に近づくなど、低下基調が持続している。
一方、消費は雇用不安の後退を背景に、自動車や住宅といった高額消費が好調である。自動車販売台数は、ガソリン価格の下落に伴う多目的スポーツ車(SUV)需要の高まりもあり、00年以来となる18万台超となっている(図表3)。
さらに、住宅販売件数も主力の中古住宅販売が07年以来となる500万件台半となっているほか、新築住宅も08年以来の50万件近辺で推移している(図表4)。とくに中古住宅では需要の強さを反映して在庫水準も低下している。