実体経済の動向

◆(個人消費)労働市場、消費に一段の回復余地

米国の雇用者数は増加基調が持続しているものの、労働参加率(*2)は77年以来の水準に低迷しており、金融危機からの回復がみられていない(図表7)。

さらに、就業率(*3)についても働き盛りである25-54歳をはじめ危機前の水準に戻っていない。これらは人口対比で職が十分でなく、職探しを諦めて労働市場から退出した人の割合が依然として高いことを示しており、一段の雇用増加余地を示唆している。一方、企業の採用計画は、大企業では足元で採用意欲が低下してきているものの、これまで採用に慎重だった中小企業の採用意欲は強くなっている(図表8)。このため、雇用回復の裾野は広がっており中小企業を中心に今後も雇用増加が期待できる。

米国経済の見通し6

次に可処分所得と消費支出(3ヵ月移動平均、3ヵ月前比)をみると、可処分所得の伸びに比べて消費が抑制されているため、足元で貯蓄率は金融危機前に比べて高止まりしている(図表9)。

この間、消費者センチメントは高い水準を維持しているものの、回復が頭打ちとなっているため、消費者が消費にやや慎重になっている可能性を示している(図表10)。

米国経済の見通し7

センチメントが足踏み状態となっている背景として、株式市場や雇用が夏場に一時的に悪化したことが影響している可能性が考えられる。もっとも、これらの悪材料は相当程度解消しているため、今後はセンチメント回復に伴う消費の拡大も期待される。

米国では11月から12月にかけての2ヵ月間で年間売上高の2割を占める重要なホリデシーズンを迎えている。全米小売業協会(NRF)は今年のホリデーセールの売上高が前年比+3.7%(前年+4.1%)と、昨年を若干下回るものの、堅調な伸びを見込んでいる。NRFは11月下旬の感謝祭後の売上は概ね予想通りとしており、ホリデーセールは順調な滑り出しとなっているようだ。

◆(設備投資)3期連続で資源関連の建設投資が下押し、当面は緩やかな伸びに留まる

民間企業設備投資では、7-9月期の資源関連の建設投資が前期比年率▲47.1%と大幅に減少した。これだけで設備投資の伸びを▲2.4%ポイント押下げており、15年に入って3期連続で押下げ要因となっている(図表11)。資源関連の雇用者数は好調だった11月の雇用統計でも減少しており、厳しい状況が持続している。

実際、原油価格の下落基調が持続する中で、油田の稼働リグ数の減少に歯止めがかかっていない(図表12)。このため、10-12月期も資源関連の建設投資の減少は持続するとみられる。もっとも、16年以降は、原油価格の反発に伴い建設投資の減少には歯止めがかかる見通しである。

米国経済の見通し8

一方、資源関連以外に目を転じると、鉱工業生産指数(3ヵ月移動平均、3ヵ月前比)の伸びはプラス圏に戻っているものの、回復に力強さを欠いているほか、設備稼働率は低下基調が持続している(図表13)。

さらに、設備投資の先行指標である国防・航空を除く資本財受注(3ヶ月移動平均、3ヶ月前比)も、15年前半にみられた大幅なマイナスからプラスに転じているものの、やはり力強さに欠けている(図表14)。このため、民間設備投資は当面緩やかな伸びに留まるとみられる。

米国経済の見通し9