CSR
(写真=Thinkstock/Getty Images)

CSRは株式投資の世界で、もはや欠くことのできないキーワードである。筆者はロンドンに拠点を置きサステナビリティ/CSRに関するコンサルティング、リサーチ、研修などに取り組んでいるが、欧州は世界でもCSRに積極的に取り組んでいる企業が多い地域である。そこで今回は前後編の2回に分けて欧州における「CSR優良企業」5社を紹介したい。


CSR戦略で約295億円の純益を生む「マークス&スペンサー」

ロンドンに本社を置くマークス&スペンサー(M&S)は、130年の歴史を持つ老舗スーパーマーケット。M&Sは自社の企業戦略としてのCSRを、「プランA」として2007年に取り組みを開始、2014年のプランAにより創出された純益は、1億6000万ポンド(約295億円)に上る。2014年には「プランA2020」として新たにコミットメントを100個発表し、取り組みを行っている。

「M&SのプランAは、リスク管理ではなく、21世紀における世界のサステナビリティでのリーダーシップを発揮するものであるべきである」という考えの下、自社のCSRを再定義し、リーダーシップのCSR戦略として進化された形で生み出されたものだ。

M&Sでは、プランAディレクターのマイク・バリー氏が、サステナビリティのリーダーとして社内外を牽引している。バリー氏は、「プランAは、全てがサステナビリティに関連している。それはマネジメントをただ変えるのではなく、ビジネスを変えることだ。」という。

M&SのプランAを一言では語り尽くせないが、特徴の1つとして、従業員全員をエンゲージメントしていることがある。全従業員86,000人の1人1人がプランAの中でそれぞれが何を実施するのかが明確になっており、それがビジネスとしてプランAを実施するものとなっている。そしてM&Sの経営陣は経営目標としてプランAの目標を持ち、各自のボーナス査定にも連動させている。この仕組みが社内で機能し、ビジネスに統合されたプランAが作られ、企業戦略として取り組むべきものとしてトップダウン、ボトムアップの両方で実施されている。


メガトレンドに正面から取り組む「ユニリーバ」

ユニリーバは、英国とオランダに本社を置く多国籍企業で食品や洗剤、ヘアケア、トイレタリーなど家庭用品、一般消費財を販売するメーカーである。企業の成長と持続可能性(サステナビリティ)を両立させる2020年までの企業戦略として「ユニリーバ・サステナブル・リビング・プラン(USLP)」を発表、世界規模の新しいビジネス・モデルとして、イノベーションを生み出しながらNGOなどのパートナーと連携して取り組みを進めている。

これは、CEOであるポール・ポールマン氏自らが伝道者として、そして、サステナビリティのリーダーとして社内外で強力にその重要性を訴えている。ポールマン氏は、「我々は歴史の転換点を迎えている。地球上で豊かに暮らし続けるために、我々一人ひとりが変わらなければならない時期に来ている。世界中の人々の生活の質を向上させていくためには、サステナビリティを中心に据えた新たなビジネス・モデルが不可欠である。生き残れるのは、このことを理解し、成長とサステナビリティを両立できるビジネスだけである。」と力説する。

世界のメガトレンド(気候変動、森林破壊、人口増加、水の枯渇など)と呼ばれる大きなリスクが既に顕在化してきており、ユニリーバ自体の企業活動へも、市場の不安定、価格変動、原材料調達の難しさなど影響を及ぼしている。それらの課題解決のために、「森林保全」「持続可能な農業」「安全な水と衛生」の3つの分野に焦点を当て、従来の経済システム下のビジネス・モデルから新たなサステナビリティのビジネス・モデルへの転換を図っている。


「ネスレ」が推進する独自のCSR戦略 “CSV”

ネスレは、スイスのヴェヴェイに本社を置く、約150年の歴史を持つ世界最大の食品・飲料会社である。自社のCSR活動の一環としてCSV(Creating Shared Value:共通価値の創造)を2006年から実施している。CSVと言えば、マイケル・E・ポーター教授の名前が思い浮かぶが、それよりも歴史は古い。そもそもCSVという名前は、ネスレのCSR戦略を他社と差別化する為に考え出されたもので、現ネスレ会長のピーター・ブラベック-レッツマット氏がCEOの時から、リーダーシップを発揮し推進してきた。

ネスレのCSR活動は、「ネスレの社会ピラミッド」として3段構造となっており、一番下の土台が「人権とコンプライアンス」、二段目が、「環境サステナビリティ」、そして、一番上が「CSV」となっており、「CSV」はこの2つの土台の上にあり支えられている。つまりネスレのCSRは「CSV」だけでなく、それを支えている「人権とコンプライアンス」、「環境サステナビリティ」についても実施することでCSR全体をカバーしている。

先進的に取り組んでいる項目としてはCSVの他に「人権」に関わる部分があり、国連「ビジネスと人権に関する指導原則」に則った人権デューディリジェンス・プログラムを推進している。この背景の1つとして、サプライチェーンにおけるチョコレートの原料であるカカオの生産地コートジボアールにおける児童労働・強制労働についてのNGOからの指摘がある。ネスレはFLA(公正労働協会)を通じて状況を確認し、「児童労働」が行われていることを認め最重要課題に設定し、同社のサプライチェーン上から児童労働を排除するべく最優先事項として取り組みを行っている。

【著者略歴】下田屋 毅(しもたや たけし) Sustainavision Ltd. 代表取締役。英国在住CSRコンサルタント。日本と欧州のサステナビリティ/CSRの懸け橋となるべくSustainavision Ltd.を2010年英国に設立。ロンドンに拠点を置き、サステナビリティ/CSRに関するコンサルティング、リサーチ、研修を行う。ビジネス・ブレークスルー大学講師(担当:CSR)

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