横浜市の中心駅であり、ターミナル駅でもある横浜駅。利用したことがある人は思い起こしてほしいが、ずっと工事しているという記憶はないだろうか。横浜駅が1915年に開業してから現在に至るまで一度も工事が完成したことはない。

果たしてこの工事は何の工事で、いつ終わるのだろうか?

開業からの歴史 日本最多の乗り入れ事業社数誇る

初代の横浜駅の駅舎は1872年に現在の桜木町がある場所に開業した。その後、1915年に現在の横浜駅と桜木町駅の間に2代目の駅舎が完成した。しかし1923年に関東大震災で被災し、現在の場所に設置された横浜駅は1928年に開業した3代目の駅舎となっている。実質1915年に開業してから、現在に至るまで工事が続いているのだ。

乗り入れているのは6社で、JR東日本(東日本旅客鉄道) <9020> 、東急電鉄(東京急行電鉄)、京急(京浜急行電鉄) <9312> 、相鉄(相模鉄道)、横浜市営地下鉄(横浜市交通局 市営地下鉄)、みなとみらい線(横浜高速鉄道)だ。これは1つの駅に乗り入れる鉄道事業社数として日本最多の数。1日平均の乗降客数は220万人と日本で5位となっている。(2014年度)1928年当時に乗り入れていたのはJRの東海道本線と東急東横線の2線だけだった。

工事が続いているワケ

これだけの規模だから、路線拡大だけでも様々な工事が必要なことが想像できる。大まかな路線拡大の工事を見ると、1928年に現在の東急東横線が開通、1930年に現在の京急本線が開通。1974年には相鉄線ホームの改築工事が完成、1976年には横浜市営地下鉄3号線が開通、2004年にはみなとみらい線が開通している。そして2015年には東急東横線・みなとみらい線でホームドアの使用が開始となっている。

現在まで工事が続くワケは鉄道会社の乗り入れが決まるたびにホームや通路、増築工事が繰り返し続けられているからだ。その他の理由は以下の通りだ。

横浜駅西口の再開発「横浜駅西口駅ビル計画」

かつては砂利置き場など荒地だった西口だったが、1950年代から現在の相鉄ホールディングス <9003> が開発を行ってきた。現在はアクセスも良いことから繁華街となり専門学校なども立地している。

そして、現在はJR東日本の「横浜駅西口駅ビル計画」が進行中だ。2011年3月に閉館したCIALと横浜エクセルホテル東急の跡地を中心に、ホームの上にもビルが繋がった形で西口と東口を地上のデッキでつなぐ計画となっている。

この駅ビルの概要は高さ135メートル、地上26階、地下3階、延床面積約9万8000平方メートルという複合ビル。ビルの工事は8年かかり、完成は2020年と予定されている。これほどの工事年数がかかるのは主な工事が夜中の2時~4時の間だけで行われるため。乗客がいない終電と始発の間で行われているからなのだ。

西口駅ビル計画では「駅前棟」「鶴屋町棟」が建設される。「駅前棟」は敷地面積8700平方メートル、施工者は竹中工務店に決定。鶴屋町棟は9階建て延べ2万4000平方メートル規模、高さは31メートルを想定している。設計者、施工者は2015年9月時点未定。

計画当初は2019年完成の予定だったが、2011年の東日本大震災を受けて設計などの見直しが進められ計画に遅れが生じている。また「線路上空棟」の建設予定もあったが見直しにより取り止めになった。建物全体も縮小する方向となっている。

これまでゴチャゴチャしたイメージがあった西口だったが、開放的なアトリウムの完成によって、人々の動線もスムーズになりそうだ。このような動線をスムーズにする工事は横浜駅だけでなく、渋谷駅など主要な駅でも行われている。

2009年に策定された「エキサイト横浜22」

横浜市は2009年に「エキサイト横浜22」を策定した。これは横浜駅周辺の概ね20年後の将来像について策定したもの。例えば、東口駅前広場の再編では東口のステーションオアシス地区の再開発が控えている。羽田空港や成田空港行きのバスが発着するYCATの再配置等の機能拡充、みなとみらい21地区とのアクセスを改善し観光ターミナルの形成に向けて再開発が進められている。

また平沼地区、南幸地区、北幸地区、鶴屋町地区、センターゾーン、ヨコハマポートサイド地区、みなとみらい21中央地区別の地域別にガイドラインが策定されている。これらの工事が計画通りに進めば2009年からの20年後の2029年に工事が完了することになっている。

交通、商業が一極集中している横浜の中心地である横浜駅。しかし東口・西口にあるバスターミナル内での動線が不便などまだまだ改善できる点も多い。こういった点からも2029年以降の工事の予定は未定と見た方が正しいのかもしれない。

2029年時点では開業から100年を超えていることになる。今後も「工事が終わらない駅」というイメージは続きそうだ。

これまでは路線拡大のための工事が多かったが、今後は住みやすさ、使いやすさに重点を置いた工事となっていくだろう。同じように工事が続いているスペインのサグラダ・ファミリアは完成には300年かかると言われているが……横浜駅の工事は一体、いつ終わるのだろうか。(ZUU online 編集部)