(写真=Thinkstock/Getty Images)
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精神的な安らぎと癒しを与えてくれるペットは、飼い主にとって家族であり大切な存在でもある。高齢化が進むなかで、ペットを飼っている60代、70代も多い。特に「おひとり様」の飼い主のなかには、ペットに全財産を相続したいと考える人もいるだろう。また、残されたペットの生活はどうすればよいのかと不安に思っている人も少なくないように思われる。以前、ニューヨークの大富豪がペットのマルチーズに1200万ドルの遺産を相続し、世界中で報道され話題となったが、日本でもペットに遺産を相続することは可能なのだろうか?

法律上では「人」以外の全ては「モノ」とされていて、動物も「モノ」扱いされるのが実情である。遺産を相続できるのは「人」だけであり、遺言書を残しておいても「直接」ペットに遺産を相続することはできない。しかしながら、「間接的に」ペットに遺産を相続する方法があるのも確かである。今回は「間接的」にではあるが、ペットに遺産を相続するための3つの方法を紹介したい。

遺言書で「負担付遺贈」をする方法

まず、遺言書で「負担付遺贈」をする方法がある。そのためには、飼い主(遺贈者)は亡くなった後にペットの面倒をちゃんと見てくれる信頼できる人(受遺者)を探す必要がある。信頼できる人が見つかったら、その人に財産を相続させる遺言書を残す。「負担付遺贈」の負担とは、条件のようなものであり、「最後までペットの面倒も見る」という負担付の遺言である。受遺者はペットの面倒を見ている限り遺産をもらえるが、ペットの面倒を見なくなったら遺産を返すことになる。遺言の中には面倒を見ているかどうかをチェックするためにも「遺言執行者」を指定しておくことも大切だ。

もし受遺者がペットの面倒を見てない場合は遺言執行者から、ちゃんと面倒を見るよう請求することができる。それでもペットの面倒を見ないようであれば、家庭裁判所に遺贈の撤回を申し出ることができるので、ちゃんと面倒を見続けてくれるかどうかの不安は軽減され、より安心して遺言を残すことができる。

ただし、「負担付遺贈」については以下の注意が必要である。受遺者は遺贈の放棄をすることができるので、受遺者に指定する人にはあらかじめ承諾をとっておくことが大切である。もし遺贈者に子供などの法定相続人がいる場合、遺留分(遺言によって法定相続分を侵害された法制相続人は一定の割合で遺言を否定し法定相続分の一部を取り戻すことができる権利)に気をつけないと、受遺者が相続争いに巻き込まれてしまう可能性もあるので注意が必要だ。また受遺者に相続する遺産が多額になる際には、相続税の支払いが生じる場合もあるので考慮しながら遺言書を作成する必要がある。

「負担付死因贈与契約」を締結する方法

2つ目の方法としては「負担付死因贈与契約」の締結がある。「負担付死因贈与契約」は贈与する人が死亡すると効力が生ずる贈与で、飼い主(贈与者)が亡くなったら、「ペットの面倒を見る」という負担付でペットを見る人(受贈者)に財産が贈与される。

「負担付死因贈与契約」が先述の「負担付遺贈」と異なる点はなにか。「負担付遺贈」は遺言という一方的な意思表示により財産を「遺贈」できるが、「負担付死因贈与」については飼い主(贈与者)とペットを見る人(受贈者)の両者の合意が成立要件となる。

そのため、「負担付死因贈与」においては、「負担付遺贈」の様に一方的に放棄されることが無いのがメリットである。ただし、契約書に捺印するなど受贈者に事前に負担をかけるので、人によっては敬遠される可能性もある。長年の付き合いがある親友など信頼できる間柄の場合、口頭の約束だけにとどめるケースもあるだろう。わざわざ契約書を作成することが望ましいかどうかは、相手との信頼関係によるといえる。

また、契約書を作成する際には「負担付遺贈」と同様、ペットの面倒を見ているかどうかをチェックする「死因贈与執行者」を指定し、遺留分や相続税についても考慮する必要がある。

遺産相続のトラブル回避ができる「ペット信託」

3つ目の方法が「ペット信託」である。ペット信託は、まず飼い主を代表にした合同会社を設立し、飼育費などペットに残したい財産を合同会社に移しておく。合同会社を設立することで個人の財産を会社に移すことができる。飼い主と合同会社が信託契約を結び、飼い主が亡くなった後の、新しい飼い主も決めておく。

飼い主が亡くなった後は、弁護士や行政書士などが信託監督人を置いて、新しい飼い主がきちんとペットの面倒を見ているかチェックすることもできる。面倒が見られていないと判断された場合は、支払を中止することができる。

ペット信託を活用することで、仮に飼い主に子供が3人いた場合、新しい飼い主に指定した子供に相続財産とは別に、飼育料を準備する事ができるので金銭的な負担をかける心配がない。デメリットとしては、複雑な内容を理解し、合同会社の設立など仕組みを作り、契約書作成や経費などの手間がかかる点である。ただし、相続財産とは別に管理できるペット信託は遺産相続のトラブルを回避し、確実にペットのために財産を残すことができる。

以上、ペットに遺産を相続するための3つの方法を見てきたが、いずれの方法においても、可愛いペットを大切に面倒見てくれる「信頼できる人」を探しておくことが大前提である。

今関 倫子 ファイナンシャル・プランナー (AFP)
外資系保険会社勤務中にファイナンシャル・プランナー(FP)を目指し、AFP(日本FP協会認定)資格取得後、独立系FP事務所に転職。女性を中心に年間のべ200件以上のマネー相談を受け、多くの経験を経て独立。個人マネー相談、執筆、マネーセミナーを中心に活動中。 FP Cafe 登録FP。

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