1月8日、日本時間22時半に米国の12月雇用統計が発表される。FRBは、12月のFOMC(連邦公開市場委員会)で9年半ぶりの利上げを決めたため、今回の雇用統計は2016年の利上げのペースがどうなるかの判断材料として注目されている。

ただ、世界の株式市場が混乱しており、数字がよければドル高という単純な為替の動きにもならない可能性が強い。雇用統計発表前に知っておきたいことを整理しておこう。

コンセンサスは非農業部門雇用者数20万人増

12月雇用統計のコンセンサス予想は、非農業部門雇用者数が前月比20万人増加、失業率は5.0%となっている。11月は、非農業部門雇用者が前月比21万1000人増加で、失業率は5.0%だった。

12月の新規失業保険申請者数の4週移動平均は27万件前後で推移しており、11月と大きな変化はないことから、12月の非農業部門雇用者数も11月実績に近い水準になる見込みだ。

ADP雇用統計、新規失業保険申請件数後の動きをみても、12月の雇用統計がコンセンサスを上回れば、一時的にドルが買われる可能性が高い。ただ、そのトレンドが続くかどうかは株式市場の動向次第だろう。株式市場の混乱や原油などコモディティの下落が続くなら、米国の利上げペースはスローダウンせざるを得ないとの見方が広まっているからだ。

米景気にポジティブな指標にもドル高への反応は一時的

中国の製造業のPMIの数字悪化、中国政府による中国元に切り下げといった世界景気減速懸念に加えて、サウジアラビアとイラク間の緊張感の高まり、北朝鮮の水爆実験など地政学リスクの高まりで世界の株式市場は年初から混乱し、投資家のリスク回避姿勢が鮮明になっている。

直近で発表された米国の雇用関係の経済指標でも、米雇用の好調をつたえる数字が出ているが、その後のドル高は限定的だった。1月6日の民間企業が発表している米国の雇用指標である12月ADP雇用統計は、コンセンサス予想の前月比19万8000人増に対し、25万7000人増と大幅に上回った。発表後ドル円は118.40円から118.60円程度までやや買われたが長続きしなかった。

1月7日に米労働省が発表した1月2日までの週の新規失業保険申請件数は27万7000件と前週比1万人減となった。市場予想の27万5000件を上回ったものの、前週比での改善傾向は顕著だったため、発表後FRBの利上げを見込んだドル買いが再燃、ドル円は117.50円から117.90円程度に買われた。しかし、そのトレンドも、世界の株価が急落する局面では長続きせず、ドル円は再び117円中頃まで弱含んだ。

FRBの3月利上げ確率は45%

FRBが12月に9年ぶりの利上げを決めた時点で、CME(シカゴ・マーカンタイル取引所)の金利先物市場では、4月のFOMCまでの追加利上げの確率を54%、6月までの確率を70%と見込んでいた。2016年中に2−3回利上げしてFFレートは2016年末に1〜1.25%程度まで上昇するのがコンセンサスだった。ただ、年初来のリスク回避の動きを受けて、1月7日時点では4月までに利上げの可能性は45%、6月が66%と低下してきている。年末までの利上げの回数は2回程度で年末FFレート0.75〜1%程度がコンセンサスとなった。

1月6日に発表された9年ぶりの利上げを行った12月のFOMCの議事録でも、全会一致で利上げは決まったものの、物価上昇の勢いが弱いことに強い懸念が示され、ぎりぎりの判断で賛成に回った委員もいたことが判明した。

FRBが公表した12月FOMC会合の議事録によると、参加者のほぼ全員が、雇用の改善を確認し物価の上昇率もいずれは目標の2%に到達するとして、利上げの条件が整ったと判断していた。 一方で、急速な原油安やドル高の影響で、物価の低迷が長期化しかねないとして強い懸念も示され、数人の委員は、ぎりぎりの判断で賛成に回っていた。

現在の株式市場のリスク回避の動きの中では、昨年9月−10月にFRBが利上げを見送ったように、当面利上げの環境は整わないとみておいたほうがよさそうだ。むしろ期待したいのは、FRBから混乱した市場への何らかのメッセージが発せられれば、世界市場も落ち着きを取り戻す可能性が強いだろう。(ZUU online 編集部)

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