(写真=Thinkstock/Getty Images)
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晴れの日には傘を差しだし、土砂降りの雨の日には傘を取り上げる…。企業業績が好調で融資の必要がないときには、銀行はお金を借りてくれと頭を下げてやってくる。ところが、いったん業績が悪化すると情け容赦なく融資を引きあげようとする。銀行はしばしばこのような例えを用いて揶揄されてきた。

そんな銀行の融資事情が変わるかもしれない。山口フィナンシャルグループ <8418> は4月に新中期経営計画を始めるのに合わせ、傘下の山口、もみじ、北九州銀行で1月に審査部を廃止し融資を決める権限を現場に移す方針を固めた。審査部が廃止されることにより、銀行にはどのような変化がもたらされるのだろうか。

銀行審査部の仕事

銀行にとって預金を集め融資をおこなうことは中核業務だ。投資信託の販売など役務収益の比率が増えているとはいえ、預金と融資の利ざやで収益を得ることが銀行の本業だ。銀行の中核業務である融資業務の中枢を担っているのが審査部である。

銀行では融資の可否を誰が判断するのか。融資額、融資期間、担保、さらには貸出先の信用状況など様々な基準により最終的な融資可否の決定者が規定されている。少額で貸し倒れリスクの低い融資は支店の長である支店長が決定権を持っている。金額が増え、貸し倒れリスクが増すにつれ、審査部、役員の決裁が必要となる。

支店長の権限では決定できない融資は必ず審査部の承認が必要となるのだ。審査部が融資の生殺与奪件を握っていると言っても良い。多くの銀行員にとって審査部とは実に厄介な部署であり、審査部の顔色を見ながら稟議書を書くことになる。支店長の権限を越える融資については審査部の承認なくして実行することはできないのだから無理もない。

銀行員に即断できる権限は与えられていない

昨年、テレビドラマ「下町ロケット」が人気を集めた。技術力を持つ中小企業が大企業を相手に堂々と渡り合うストーリーに多くのサラリーマンは共感した。原作者の池井戸氏は元銀行員であり、ドラマの中には銀行に対する皮肉が込められていたのも印象的だ。そして、ドラマの中では銀行から出向してきた経理部長が重要な役割を演じる。

このドラマの見所はエネルギッシュな経営者が夢の実現に向け困難に立ち向かう姿だ。それを際立たせているのが、銀行の旧態依然とした融資姿勢と成長企業のアグレッシブな経営との間に存在するギャップだ。成長企業が必ずしも銀行から優良企業として認められ、銀行の協力が得られるとは限らないのだ。むしろ、果敢に困難に挑戦する成長企業に対し銀行はマイナスの評価を下しているケースも実際にはたくさんある。

銀行が融資先として相応しいと考える企業と成長企業の間にはギャップがある。そして銀行が考える優秀な経営者と成長企業の経営者の間にもギャップが存在しているのだ。優秀な経営者とはどのような経営者だろう。過去、日本の経済発展を支えてきた経営者の多くは、常識に囚われない型破りな経営者だった。決断力に優れ、意思決定が早い。そんな経営者が業界の風雲児となり、日本経済をリードしてきた。

しかし、銀行は必ずしもこうした経営者や企業を高く評価するとは限らない。どんなに将来性について熱弁を振るっても、それだけでは審査部を納得させる稟議書を書くことはできない。どんなに独創的な発想で豪放闊達であっても、将来の業績の裏付けをきちんと示すことができなければ、審査部を納得させることはできない。決断力がある経営者だからといって、銀行にまで即断即決を求められても、銀行の担当者には即断できるような権限は与えられていない。

こうしたギャップを熟知した池井戸氏であるからこそ、そのギャップを逆手に取り、多くの人の共感を得る作品を作ることができたのだろう。

審査部廃止の意味

審査部がなくなることは何を意味するのか。それはつまり、権限が現場に移ることになる。多くの銀行員は感じているはずだ。審査部は書類上の数字しか見ていない。現場を見ることもなく、書類の上の数字だけで物事を判断しようとする。本当にこれで真っ当な融資判断ができるのだろうか。

そして、融資先も銀行に対し同じことを感じているのだ。杓子定規で上辺だけの融資判断ではなく、より実態に見合った形で、取引先を取り巻く事業環境の変化や同業の戦略を分析して成長余力を調べ、融資するかどうかを判断する。現場に権限が委譲されることで、きっとそれが可能になるに違いない。それこそが、審査部が廃止される究極の目的のはずだ。

しかし、その反面、一抹の不安を感じずにはいられないことも確かである。権限が現場に委譲されることで、審査が甘くなったり、ある種のモラルハザードが起きないか。きっとそのような心配をする人もいるだろう。

ところが、銀行員の考えはまったく逆とのことだ。ある地方の銀行員は、「権限が委譲されれば、自身の責任が重くなる。これまで以上に融資に対し慎重な姿勢を取る現場が増えてしまうのではないか」と語る。かえってリスクを取ることを恐れ、融資に消極的になるかもしれない点には注意が必要だろう。(ZUU online 編集部)

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